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未来の会

【「集中」の是々非々 63】

【「集中」の是々非々 63】

「日本の英語力92位に転落」の記事に驚愕

「未来の日本を作るためにも今、出来る事を」

100年後輩の日本人に「日本は昔、第2位の経済大国だったって書いてあるけど信じられないね」と言われないためにも、「失われた130年」にならないためにも、今の我々の行動が大事になる。

毎年11月に発表される「EFエデュケーション ファースト」による国際ランキングで、日本は92位に転落したと毎日新聞と日本経済新聞が報じた。一部の英語教育関係者は「このランキングは正しい評価ではない」「TOEFL国別ランキングも正しい評価ではない」と反論するが負け惜しみに聞こえてしまう。この手のランキングには世界中が一喜一憂している。

日本の92位という順位には驚くが、学術論文数で世界トップクラスの中国が91位となると確かにこのランキングの評価基準に疑問符が付くが、日本の英語力が低下し続けているのは間違いのない事実だ。日本の英語力の低下は長年に亘り懸念されており、国際的なランキングでもずっと低迷し続けている。英語が世界共通語である国際社会で、多くの日本人が「壁の花」や「壁のシミ」化しているのは残念だ。この国際化の遅れは「医師の海外留学志望者の減少」という形でも表れている。この傾向が続けば、日本は国際社会から取り残される危険性が極めて高くなる。

「国際社会共通言語」である英語は、ビジネスや学術、医学・医療を含むあらゆる分野で必須のスキルであり、特に医学・医療分野では最先端の研究や技術が英語で発信されている。世界の最新医学情報にアクセスするためには英語力が欠かせない。また、国際的な医療人として広く活躍するためには、他国の医療事情を直接学び、多様な文化的背景を持つ医師や患者や同僚と円滑にコミュニケーションを取る能力も必須になる。にも拘わらず、医師や医学部生が海外留学を敬遠する背景には、経済的な理由だけでなく、日本国内でのキャリア構築において留学経験の評価が低い事も指摘される。その典型的な例が今の外務省だ。本来、外外交官はエリートの象徴だったはず。しかし、最近では海外大使館勤務を断るキャリアが増えていると言う。世界とのパイプが無くても外務省内で出世が出来るからと言うのが理由だ。この傾向は医学・医療の分野にも見られる。こんな状況では日本の医療技術や研究の国際競争力が低下するのは明白だ。

未来の輝かしい日本を作りあげるためにも、英語力の向上と留学志望者の増加が重要な鍵となる。そのためには、3つの取り組みが必要だ。第一に、医学教育現場での英語教育を根本的に見直し、実践的なコミュニケーション能力を重視したカリキュラムを導入すること、第二に、留学経験を持つ人材がキャリア上で正当に評価される環境を整える事。例えば、医師が海外で得た知識や技術が国内で正当に認められる仕組みを強化することで、留学を選択するメリットが明確になる。第三に、留学費用の負担を軽減するための奨学金制度や、留学中の生活支援の拡充も必要だ。

弊誌『集中』の人気連載「私の海外留学見聞録」を読めば留学の意義は一目瞭然だ。誌面は留学経験者の語る体験談で生き生きとしている。留学経験者が口を揃えて語る留学の最大の魅力は、世界中から集まる多様な人々との交流を通じて、人脈を広げられる事。異なる視点や文化に触れる事で得られる洞察は、国内では得られない貴重な経験だと言う。この広い人脈は、医学・医療やビジネスの現場で問題解決の糸口となるだけでなく、個人のキャリア形成にも大きな力を与えてくれる。さらに、留学経験は日本社会全体の国際的な競争力を高める原動力にもなる。日本が国際社会の中で確固たる地位を築き続けるためには、英語教育と海外留学への支援を強化し、国際的な視野を持つ人材を育てる事が必須だ。英語力を磨き、留学で世界と繋がる事が、未来の日本を支える鍵となる。100年後の「沈没した日本」は見たくは無い。

世界ランキングに出典「EFエデュケーション ファースト」

 

 

 


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