【日本の女性が世界の女性と同じ権利を有する事の難しさ】
「女性の受診も配偶者の同意が必要と言う日本は世界の冷笑に」
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旧知のパリ大学教授から届いたメールには、彼の友人の国連関係者が「国連の劣化」を嘆いていると言う。それはそうだろう。今、世界で起きている紛争について、常任理事国の一国の拒否権で決議は否決され、和平への道は閉ざされる。実に不可解なルールだ。「大国の一致」が必要だと言うが、紛争に関して言えば、紛争当事者の背後にはアメリカ・ロシア・中国の大国だ。「大国の一致」など有り得ない。このルールが存在する限り、国連による紛争解決は実効性を欠くと言わざるを得ない。しかし、国連が持つ機能は昔から変わっていない。「国連の劣化」と感じるのは、大国が絡む紛争が世界中で起きているからに他ならない。別な見方もある。「国連の劣化」の一つに、国連の勧告には強制力が無い事が挙げられる。教授は、この強制力の欠如で助かっている国の一つに日本があると笑う。事実、日本は女性に関する医療やジェンダー平等について、度々、勧告を受けるもスルーしている現実がある。この10月にも国連は日本のジェンダー平等への取り組みに対する見解を発表しているが、日本は勧告馴れてきてしまっている感がある。
教授は、日本がジェンダー平等の取り組みで遅れている理由を2つ挙げている。一つは未だに家長制度を引き摺っている事、もう一つは「変わりたくない・変われない」という日本人の特性だと指摘する。家父長制度を辞書で引くと「主に男性が支配的で特権的な地位を占める社会的システム」とある。教授の指摘は正しいのか。ダイバーシティーやジェンダーの分野で、日本は先進国の中で最下位にある。「報道の自由度ランキング」でも同様に最下位に近い所に位置している。世界では日本にとって厳しい判定が行われている事をもう少し知るべきだ。
今年、ジュネーブに日本人の市民団体が乗り込み、日本社会が如何に女性を差別しているかを訴えた。韓国の市民団体が国連に乗り込み、日本批判を繰り返すニュースは目にするが、自国の批判をするために国連に乗り込む団体は珍しい。それほどまでに日本の現状に危機感を覚えている証しだ。その訴えの中に妊婦を含む女性に対する医療がある。「リプロダクティブ・ヘルス&ライツ」も槍玉に挙がる。日本では、人工妊娠中絶についても原則、配偶者の同意を要する。NIPT(出生前診断)でも配偶者の同意を必要としている。このように女性が自身の身体について決定する権利が制限されている日本の医療制度。欧米からは理解不能だと冷笑されている。一方で、日本では若い女性の堕胎はずっと年間十数万件を越えている。厚生労働省のHPには2022年度の「人工中絶届出数」は12万2,275件とある。あくまでも届出件数だ。こんな数字がありながら、一方では配偶者の同意を要する制度との矛盾は明らかだ。一例を挙げると「大学医学部2023年問題」は、欧米諸国が日本政府に突き付けたチェンジを求めた通達だった。悲しいかな、この通達は先進国で唯一日本だけだった。日本は慌てて医学部教育カリキュラムを世界基準に変えた。その気になれば変われるのだ。「日本の女性が世界の女性と同じ権利を有する」事に反対している日本はもう変わらなければ。
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