地方の医師不足を解消するために新制度?
医師偏在を生んだのは新臨床研修制度ではなかったか?
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戦後の混乱の中、連合総司令部GHQ主導でインターン制度と医師国家試験の実施が始まった。一度決まると変われない日本は混乱期に出来た制度が疲弊しているにも関わらず長く守り続けた。その後、経済成長を遂げた日本に無給のインターン制度は有り得ないと東大医学部の学生が騒ぎ出したのが1965年頃。そしてこの騒ぎが全国に広がり学生運動に繋がっていった。漸く政府が動いたのは2000年だ。この年に卒後2年間の臨床研修が義務化される法律が出来、2004年から実施された。この新臨床研修制度の大義は立派だったが、制度導入により大学の医局の力は削がれる事に繋がった。この制度のお陰で、地方の医科大学出身者の多くが大都市の病院を研修先に選択するようになり、地方の大学医局は医師確保が困難になり、地元の大学医局に医師派遣を頼っていた地方都市の中核病院では医師不足が出始めた。即ち、この制度が地方の医師不足を生んだと言える。弊誌も、この点を何度となく指摘してきたが、今、この制度が生んだ地方の医師不足を解決するために、政府は再び新たなアイデアを打ち出しているが、一番簡単で単純な方法は、2004年から開始した新臨床研修制度を廃止する事だ。
一方、この20年でこの制度の有益な部分が明確になっている。一番は研修医の待遇の改善だ。無給医からの脱皮は素晴らしいし、研修内容は充実し、研修医がオールラウンドでの医療知識を習得し、臨床能力アップに貢献した。これらの有益な部分は、この制度を廃止しても今後も続いて行く。後は大学医局の力の復権を果たせば、医局に研修医が集まり、医局から地方の基幹病院等へも医師の派遣が可能になる。大学医学部の医局をもっと評価し、有益な機能を復活させるべきだ。
政府は、地方の大学医学部の入学枠を設け、卒業後も一定期間は附属病院での勤務を条件とする等の考えを持つ。同時に、学生への奨励金や大学医学部への施設拡充資金を提供し、臨床研修を手厚くすると言う。今、地域枠の卒業生が義務付けされている9年間の地域勤務からの離脱が問題となっている最中で、同じ仕組みとなる新たな入学枠を設ける考えは理解出来ない。付け焼き刃的な発想で解決が図れるほど地域の医師不足は簡単ではない。一方、地方の大学医学部も政府任せの待ちの姿勢ではなく、独自の考えを打ち出すべきだ。その独自案に惹かれる研修生は必ずいる。それを掘り起こすべきだ。
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