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がん薬物療法専門医の7割に「製薬マネー」

がん薬物療法専門医の7割に「製薬マネー」
763人に総額5億8500万円

医師が参加しているNPO法人「医療ガバナンス研究所」と、調査報道を行っているNPO法人「ワセダクロニクル」は、がん薬物療法専門医に対する製薬企業からの謝金について調査を行った。その結果、総額で6億円弱が約7割の医師に支払われていたことが分かった。調査結果は9月、英国の医学誌『BMJ Open(オンライン版)』に掲載された。

 調査対象は2016年4月時点で日本臨床腫瘍学会認定のがん薬物療法専門医だった1080人で、16年度に日本製薬工業協会加盟(製薬協)の78社から支払われた謝金を調べた。その結果、70・6%の763人が謝金を受け取り、総額は5億8500万円に達した。受け取り金額の中央値は12万円だったが、142人が100円以上を受け取っていた。

 謝金の内訳は、医薬品の販売促進活動の中心である講演会・勉強会の講演料、製薬企業からの委託で執筆した文章に対する原稿料、医薬品に対するコンサルティング料で、総額の79・9%を講演料が占めた。交通費や宿泊費も手配されることがある。領域別では呼吸器がトップで、総額の37・0%に当たる2億1700万円が支払われていた。16年、肺がんは男性では最大の死因、女性では第2の死因という背景があり、新薬を発売していた製薬各社は販促にしのぎを削っていた。次いで消化器、血液内科、乳腺が続いた。

 企業別で総額が最も多かったのは中外製薬で、支払額は総額の17・8%に当たる1億400万円。そのうち33・5%(3500万円)が消化器領域、31・7%(3300万円)が呼吸器領域、17・0%(1800万円)が血液内科領域、12・0%(1100万円)が乳がん領域に配分されていた。次いでアストラゼネカ、大鵬薬品、小野薬品が続いた。

 製薬マネーの受け取り自体に法的問題はないが、医師は製薬企業のステルスマーケティング(消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為をすること)の片棒を担いでいることになる。また、医師本人は中立的な立場で処方を行っているとしても、無自覚の下に特定の製薬企業を利する処方を行っている可能性がある。

 論文を執筆した医療ガバナンス研究所研究員の尾崎章彦氏(公益財団法人ときわ会常盤病院乳腺外科医)は、「ただでさえ高いがん薬剤の薬価に講演料などが宣伝費として上乗せされている。こうした講演会・勉強会は終わりにすべき」と述べる。具体的には①講演会・勉強会には参加したい医師が手弁当で参加する②製薬企業は医師に講師を依頼するのは止め、社員が講師を務める——を提案する。

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