厚生労働相の諮問機関、社会保障審議会介護保険部会を舞台に、来年の通常国会で予定される介護保険法改正に向けた議論が8月末、スタートした。
利用者の負担増、自宅でサービスを受ける時の利用計画「ケアプラン」作成に自己負担を導入するか否かが焦点だ。ただ、自民党や利用者団体は否定的。厚労省内には「これができなければ、負担増など何もできない」(幹部)との声も漏れる。
8月29日の同部会。厚労省が示したペーパーには、年末までに結論を出す検討事項が列挙されていた。①保険料負担年齢の引き下げ②介護施設大部屋利用時の室料負担③サービス利用時の自己負担割合(原則1割)の2〜3割負担者の拡大④ケアプラン作成に自己負担導入⑤要介護1、2の人対象の生活援助サービスを市町村事業に移管……。負担増を伴うものがズラリと並ぶ。
2019年度の介護費(予算)は11・7兆円、65歳以上の保険料は月額58691円と、00年度の制度発足時より介護費は3倍、保険料は2倍に膨らんだ。介護費は40年に25・8兆円に達すると推計されている。厚労省はケアプラン作成への自己負担導入について「他に比べ理解を得やすい」と見ている。
17年度のケアプラン作成費などは4885億円で、介護費の5%弱。介護保険を使う人は、月に1度、ケアプランを作らなくてはいけない。多くはケアマネージャーがつくる。作成費込みのケアマネジメント費は月4500円〜1万3000円程度。ただし、利用者の自己負担はゼロとなっている。介護保険の設計時、制度利用の「入り口」であるケアプランにまで自己負担を求めれば普及の障害になる、と考えられたようだ。
「有料化は重要な論点。見直しが必要だ」。29日の部会で、経団連の井上隆・常務理事は自己負担導入に賛意を示した。
だが、認知症の人と家族の会の花俣ふみ代・副代表理事はサービスの利用控えに繋がると指摘し、「これ以上の負担増は受け入れられない」と強調した。連合の代表も反対に回り、接点は見いだせなかった。
ケアプランへの自己負担導入には、「過剰サービスへの歯止めが効かなくなる」との懸念もある。自己負担を求めれば、「介護計画に私の希望をもっと反映させろ」と主張する利用者が増えると見てのことだ。自民党は7月の参院選時の総合政策集で「現行制度を堅持」と約束した。公約を数カ月で覆すには障壁が高い。
検討項目中、最も大玉で、かつ厚労省が本音で「次の最大の課題」と考えてきたのが、保険料負担年齢(40歳以上)を30歳以上などに引き下げる案だ。親が65歳以上になる時の第一子の年齢が制度発足時より8歳程度若返って32歳となった。「30歳でも親の介護は身近」といえるようになり、保険料を徴収する名目も立つ、というわけだ。
しかし、厚労省老健局の黒田秀郎・総務課長は「高齢者を支える制度という現在の考え方を維持するのか、『年齢の限定を狭めた(普遍的な)制度』という新しい考え方を取るのか、根本に遡った議論が必要」と指摘した。年末に結論を出すには時間が足りない。
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