最初に前回に積み残したコンビニエントクリニックとアージェントケアを説明しよう。どれも高額な米国医療の隙間を縫って、患者のニーズが零れ落ちないように最近発展してきているものである。
コンビニエントクリニック
コンビニエントクリニック(別名・リテールクリニック)とは、医師ではなくNP(ナースプラクテショナー、診療看護師)と呼ばれる上級看護師が、限定された軽疾患の患者に対し、事前予約なしで診断・治療・投薬を行う外来診療機関である。
これらは、薬局やスーパーマーケット、ショッピングモールの中に開設されており、患者の生活圏内で利便性の高い立地である上に、夜間や週末診療を行っているケースが多い。地域によっては、プライマリケア医不足の解消や 救急外来における医療費削減の切り札として期待されている。
リテールクリニックで診療を行う代表的な対象疾患は、州の規制により多少の違いはあるが、熱・咳・のどの痛み・鼻づまりなどの風邪症状やアレルギー症状、血液検査を含む健康診断、発疹や日焼けなどの皮膚症状に加えインフルエンザなどの予防接種などが挙げられる。慢性疾患に関しても基本的に治療・投薬は行わず、実施するのはコレステロールや血糖値などの検査のみとなっている。
全米に2000件以上(2014年)でき、その簡便さと廉価さのために急速に普及している。
アージェントケア
アージェントケア(急病診療所)とは、従来のエマージェンシールーム(ER)以外に作られた外来のクリニックになる。名前の通りアージェントケアは基本的な疾患で、怪我とか緊急を要する疾患を扱うが、重篤なものはERを紹介する。ヨーロッパやイギリスでも同じようなウォークインクリニック(予約なしの受診施設)でサービスが提供されている。アージェントケアは通常24時間オープンではないが、米国では70%が午前8時前に開き、95%が午後7時以降に閉まる。全米に1万件以上(Wikipedia)あるといわれる。
Lake Nona community, medical city
不動産業のTavistock社が開発し、650エーカーからなるのがLake Nona communityである(写真①②)。オーランド空港から近く、国道などの交通の便がいいということで開発されたエリアである。新しい街で、平均年齢は36歳、高所得者が住むことでも知られている。スマートシティを目指しており、ネット環境が非常に良く、シスコ選定のsmart+connected cityに選ばれた。その結果、5000人以上が在宅勤務をしているという。
住みやすい生活環境はネットだけではない。ハウジングコミュニティー(住宅)、US Tennisのトレーニング施設(写真③)やエンタテーメント、学校、商業施設など通常の地域社会にある施設や機能がそろっている。スポーツができ、自然と親しめる環境、教育(生涯教育も含め)も受けやすい街づくりを目指し、住民同士がリアルに繋がれる場も提供している。
病院環境も充実している。Lake Nona medical cityはLake Nona communityの一部で65エーカーからなる。メディカルシティーには前々回述べたNemours Childrenʼs Hospital、さらには前回述べたVA Medical Centerなどの病院、クリニック、フロリダ州立大学のメディカルスクール(UCF Health Sciences Campus)、UCF Lake Nona Cancer Center、研究機関、ヘルス・ライフサイエンス企業がある。
また、GuideWell Innovation Center などの起業家のためのイノベーションやインキュベーション、アクセラレーター施設。やUF Research Center などもある。つまり、Lake Nona communityはヘルスケアとライフサイエンスが協業することでイノベーションを促進するという概念の下で設計されている。
GuideWell Innovation CORE(写真④)は、スタートアップ企業が集う場として作られ、写真⑤のようなホールで連日のようにセミナーやピッチが行われている。
住人は若いが、米国型の地域包括ケアの1つといってもいいかもしれない。
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