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Nemours Children’s Hospital (Nemours 小児病院)

Nemours Children’s Hospital (Nemours 小児病院)

 2012年10月22日に患者家族諮問委員会の要望やニーズを反映し作り上げた小児専門病院である。duPontが米デラウェア州に立てた病院と姉妹関係にある。

 建設総額は$380Mで、最初の5年で20万人の患者が利用した。ベッド数は137床で、うちNICUは13床、PICU数は10 床、その他はクリニックや外来診断センター、リサーチ・教育施設からなる。

 中心は、この病院とデラウェア州のNemours/Alfred I. duPont Hospital for Childrenで、地域の開業医などと連携した子供病院のヘルスケアシステムを構築しており、米国東海岸での地域を超えて充実した子供のケアを行っている。病室も新しいだけあって、非常に快適である(写真①)。具体的には19の提携病院、800人以上の医師が関与している。

 ホリスティックなアプローチでガーデン、散歩道、水、ペットなどの癒やしの要素を環境に取り入れて、メンタルヘルスにも力を入れている。病室も家庭的な雰囲気で、駐車場もハンディキャップ(身障者)対応の駐車スペースの数が充実している。

 IT化には非常に注力しており、2010年にはHIMSS Davies賞(電子カルテ優秀賞)を受賞し、HIMSS Stage 7レベルであるということで、HIMSSから紹介されての視察になった。写真②のように、夜間はLED電球を使ったライトアップが行われており、オーランド国際空港に着陸する時に上空からも見えるという。

 海外の患者も積極的に受け入れている。国際化も進んでおり、海外からも含めて国際対応をしている。通訳は無料で手配可能である。

 海外からの診察手順は下記の通りである。

Step 1: 電話か病院指定のオンラインのコンタクトフォームでアポイントを入れる。

Step 2: 英語で(あるいは英語に翻訳して)電子カルテの情報を病院へ送る。

Step 3: 大体のお金の見積もりを病院からもらう。

Step 4: アポイントの確定を病院から受け取る。

Step 5: ビザが必要なら用意する。

Step 6: 病院に行く旅行の準備をする。

管理センターで医療安全を担保

 この病院のICTで最も特徴的なことは、logistics centerと言われる集中管理室(写真③)である。米国ではeICUという形で、旗艦病院のICUが他の病院のICUの状況をモニターしたり、指示を出すシステムが普及したりしている。ここではその小児病院版を見せてもらった。

 この管理室では、2つの病院の400人全ての病室がモニターできる他、患者の生体モニターとリンクすることで、患者に変化があった時に即発見でき、現場の医療職に連絡することができる。

 ちなみに、ここでモニター画面を凝視している人達は医師や看護師などの医療職ではなく、paramedicと言われる救急隊員や医療のトレーニングを受けた人達である。車椅子の方も1人勤務していたのが印象的であった。

遠隔医療にスマホを活用

 スマホを通しての遠隔医療も積極的に行っている。診療科目は循環器、神経内科、栄養科、内分泌科など16科目である。

 ただ、日本で言う遠隔医療というよりは、スマホを活用して、7日間24時間いつでもcare connectという形で患者や家族と医師が繋がっているシステムである(写真④)。具体的には音声やアラーム、テキストデータで繋がった遠隔医療である。コミュニケーション回数は年間に音声が36万9169回、アラームが339万8727回、テキストが482万1006回であったという。

 ちなみに、医師の遠隔診療を受けなかった場合、10%の患者は何もアクションを起こさず、26%がER(救急センター)、34%がアージェント・ケア(急病診療所)、28%が医師のオフィス(いわゆる外来)を受診するという。分析によれば、このシステムの導入のおかげで、フロリダ州政府は134億円の医療費を削減できたと試算されている。

 データや生体モニターも共有化されている。自宅で生体モニター、例えば酸素飽和度をモニターしていれば、そのデータは毎分病院に送られるし、そのデータ自体を患者側も見ることができる。

 次回は、米国のアージェント・ケアとコンビニエント・クリニックについて述べることにする。

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