もはや旧聞に属する話題だが、昨年8月25日に、早稲田大学でちょっとした椿事があった。
この日、製薬業界と医師の「癒着」をテーマにした「カネの流れは何を明らかにするのか:探査報道『製薬マネーと医師』」と題するシンポジウムが開かれた。主催したのは、東京大学医科学研究所元特任教授の上昌広氏が主催する「医療ガバナンス研究所」と、ジャーナリスト集団の「ワセダクロニクル」で、製薬企業から医師に支払われているカネの流れを解明し、その問題性を討議するという趣旨だった。
例えば、製薬会社が「奨学寄附金」という名目で医師にカネをばら撒き、その企業が新薬を発売した際、受け取った医師が「有効性」にお墨付きを与えるといった事例が事欠かない。これは、明らかに利益相反であり、企業と医師の「癒着」の温床になってはいないか、という批判が上氏を中心に従来から根強いが、「奨学寄附金」といっても実態は販促活動の経費に他ならないからだ。
武田のビラ配り医師を学会が除名
使途が限定されているわけではなく、飲み食いに使おうが構わない。先進国にはあまり例がなく、極めて「日本的な慣行」らしい。業界団体「日本製薬工業協会」(製薬協)の加盟社(71社)は疑問にも思っていないようだが、外資系製薬会社はこれを避ける傾向にあるという。
ところがシンポジウムの会場入り口で、表に「日本の医学研究は産学連携の形で奨学寄附金支援されてきた」という趣旨の主張が書かれ、裏には上氏が外資の製薬会社から「資金が渡っていた」という、いわば個人攻撃が綴られているビラを撒いていた人物がいた。シンポジウムを牽制し、批判する目的であったのは明らかだったが、医師として武田薬品工業に勤務する井上雅博氏に他ならなかった。
しかもビラには、なぜか井上氏が所属する「日本製薬医学会」が共催する学会のプログラムが掲載されていた。これでは、同医学会が、シンポジウムのテーマである「奨学寄附金」を問題視すること自体に反感を持っているかのように受け取られかねなかった。
このため、「日本製薬医学会」は昨年8月28日、ビラについて「無断で当学界の名をかたり配布したもの」とする声明を発表。井上氏を、除名処分とした。
さらに、上氏がインターネットサイトで「あの手この手で情報公開を妨害する製薬企業」と題して書いた記事によると、この件を自身のフェイスブックで明らかにしたら、武田の幹部が研究室を訪れ、「会社としては一切関与しておらず、すべて井上が勝手にやったこと」だと弁明したという。だが上氏は、「サラリーマンである井上氏に、所属する会社や学界の幹部の反対を押し切ってまで、ビラを撒くような度胸があるのだろうか」と指摘。「もし、製薬企業が組織ぐるみで身分を隠し、今回のような行動をとったのであれば由々しき問題だ」と疑問を投げ掛けている。
ちなみに、武田のメディカルアフェアーズ部の岩崎幸司GMは、「日本製薬医学会」の理事だ。この辺からも、製薬企業と医師の「癒着」が垣間見えそうだ。しかも、「ワセダクロニクル」が公表している各製薬会社のデータから、「日本製薬工業協会」の加盟社が、2017年度に医師個人に支払った金額は前年度9億円アップの273億円にも達している。当然、処方されている医薬品と、こうした「製薬マネー」の関係について疑問が湧く。
医薬市場の縮小になり振り構わぬ行動
要は、業界の盟主である武田が、一方で「グローバル経営」だの「大型海外M&A」だのと「国際舞台」で話題を集め、会社自体も経営陣から見たら上場企業にはあるまじき「国籍不明」のような体を成すに至りながら、こうした怪しげでドロドロとした「日本的な慣行」だけはしっかりと健在ということか。さすがに武田が「組織ぐるみで身分を隠し」、「奨学寄附金」という名の医師への“媚薬”を死守するため、社員に人身攻撃のビラ撒きに、業務命令で早大へ単身行かせたとは考えにくい。それにしても、このギャップをいったいどう考えたらいいのか。
日本の医薬市場は社会保障費の自然増加抑制圧力が強まり、ジェネリック医薬品が浸透し始めて薬価改定も毎年実施されるようになった結果、今後10年間で毎年1%の縮小が避けられなくなると予測される。それでも、何とか国内市場に旧態依然の「日本的慣行」でしがみ付く一方、「グローバル化」への対応とばかり、アイルランドの製薬大手・シャイアーを買収して約6兆円ものとてつもない負債を抱え込んだ形だ。
ところが、「グローバル経営」を標榜しながら、どう考えても東芝のみならず「日本企業の習性」である「高値づかみ」の下手を打ったように思える。何しろシャイアーの買収プレミアムが、買収話が最初に報道される前の株価対比で実に64・4%という高さだったから、足元を見られて値を釣り上げられたのは間違いない。
その挙句、合併手続きが完了して5カ月近くたったのに、未だ希望の見えるような話題は何も聞こえてこない。聞こえてくるのは、ドライアイ治療用の点眼剤「シードラ」と止血用の「パッチ剤」売却(5月)や、新興国市場の資産の一部売却(1月)、大阪本社ビル売却(同)といった、巨額に膨れ上がった負債の削減に関するものばかり。同時に、肝心の武田自身の株価がこれまたパッとしないのだ。
5月29日15時の取引値でまた4000円台を切り、3850円。5月14日に武田が発表した2019年3月期の連結純損益が、シャイアーの買収関連費用の計上が響いて3830億円の赤字となる見通しであることが影響しているが、昨年の買収発表時から下落傾向が止まらない。「このままだと3500円のラインも切るのでは」という投資家の不安も聞こえてくる。「戦後最大規模の大型海外M&A」と大騒ぎされ始めてから1年以上経っても、ますます市場の反応が冷たくなるというのは、武田にとっては深刻な事態ではないのか。
一部には武田のシャイアー買収を「グローバル化への挑戦」などと評価する向きがあるが、武田が実際に内外でやらかしていることは、案外、悪しき「日本的慣行」ではないかという印象が否めないのも確かだろう。
米議決権行使助言会社であるISSは、武田の過去5年間の平均自己資本利益率(ROE)が3.2%と、基準値である5%を大きく下回っているとして、株主に対し、Weberの取締役再任に反対するよう推奨しています(2019.6.13)が、同社は3年前にも武田薬品が「5年平均のROEが5%未満で、改善傾向がない企業」として指摘して、株主に対して取締役再任に反対するよう推奨しています(日経新聞:2016.6.22)。つまりこんな状態が10年近くに渡って続いているということです。その間、200数十年にわたって多くの武田マン&ウーマンの地道な努力によって蓄積されてきた貴重な有形、無形の価値ある大量の資産が売却されてきました。こんな状況下にありながら、長谷川やWeberの私利私欲、独善経営に対してなんの発言もしない、多くのOBを始めとする武田関係者は一体、何を考えているのでしょうか?特に、これらの流れを作った長谷川をCEOに指名した武田国男氏およびその補佐役とも言うべき長澤秀行副社長(当時)の責任は限りなく重い、と言わざるを得ません。
武田の最新の定時株主総会招集通知のp35にも記載されているCore Earningsと言う概念は、会計基準には
全く準拠していない創作用語だそうですね。実質的成長がCore Earnings+38.7%と表示されているにもかかわらず、会計基準に準拠した当期利益が△41.6%となってるのは、株主を欺くための作為としか言いようがないのでは無いでしょうか。数年前に、就任して間もない二人の外人財務担当者が、我々には理由も分からぬままに、たてつずけに辞めていますが、このようなウエーバーの不当とも言える要求に対応しなかったためだったんだろうと、段々、分かってきました。17億円と言う無謀とも言える高額報酬や、長期にわたる高率タコ配の継続など、ウエーバーや長谷川の私利私欲に満ちたとも言うべき、常軌を逸した経営を、一刻も早く、正常に戻すべきです。しばしば指摘されているように、ウエーバーは、色々な意味で、日産のゴーンより悪質かも…。ISSも指摘しているように、一刻も早くウエーバーを退任させ、同時にウエーバーを招請した長谷川も武田から速かに放逐すべきだと思います。