ジョンズ・ホプキンズ
クエーカー教徒で実業家のジョンズ・ホプキンズ氏(1795〜1873年)が遺贈寄付(遺言によって自分の遺産を寄付すること)した700万ドルを基に、ジョンズ・ホプキンズ大学が1876年、ジョンズ・ホプキンズ病院が1889年にメリーランド州に創設された。
病院創設の際、信託者達は「ビッグ4」と呼ばれた腕利きの医師4人を招聘している。
ちなみに、この中の一人、内科医のウイリアム・オスラー博士(写真①)に、聖路加国際病院理事長などを務めた故日野原重明氏は大きな影響を受けたという。オスラー博士の講演集『平静の心』を共訳したり、オスラー博士の言葉「医学は科学に基づくアートである」を座右の銘にしたりしている。
現在のJohns Hopkins Medicineは六つの病院(Johns Hopkins Hospital, Johns Hopkins Bayview Medical Center, Howard County General Hospital, Sibley Memorial Hospital, Suburban Hospital, Johns Hopkins All Children’s Hospital)と4カ所の郊外ヘルスケア/サージャリーセンターを運営し、年間の合計外来数は約280万件にも上る。
定評がある『USニューズ&ワールド・リポート』誌の米国病院ランキングでは、ジョンズ・ホプキンズ病院は3位、ジョンズ・ホプキンズ大学医学部は3位を誇る。NIH(国立衛生研究所)からの研究費の獲得は約462億円で2位。また、ノーベル賞受賞者を20人以上輩出している。
ジョンズ・ホプキンズ病院の目的は、医学教育、医学のリサーチ、さらに臨床ケアの標準化された卓越性を通してコミュニティの健康状態の改善のみならず世界の健康に寄与するというものである。
ジョンズ・ホプキンズ病院はインターナショナル部門を作り、理念通りに世界の医療に貢献しようとしている。
かなり多くの提携先や進出先を持ち、日本でも東京ミッドタウンクリニック(東京・港区)と提携していた(2017年3月に提携契約終了)。
ジョンズ・ホプキンズ病院は医療保険を提供している。基本は約4万人いる従業員向けになるが、地域の住民も加入することは可能である。ただ、あまり大きな保険組織になっていないのが現状である。
■Johns Hopkins Medicine
・年間合計入院数:115,000人
・年間合計救急件数:360,000件
・従業員数(教授&病院スタッフ):40,000人
■Johns Hopkins Hospital
・『USニューズ&ワールド・リポート』の米国病院ランキングで22年連続1位(現在3位)
・ベッド数:1,154床
・フルタイム医師数:2,100人
・病室数:491室(大人)、205室(小児)、合計696室
・手術室(OR)数: 33室
エリクソンリビング
米国でも高齢化問題は非常に重要である。統計では、65歳以上の高齢者はそれ以外の人口に比べ3倍の速さで増加し、2050年までに75歳以上の人口は2.5倍になると言われている。
終の住処として米国で普及しているのは「CCRC(Continuing Care Retirement Community/高齢者健康コミュニティ)」である。エリクソンリビングは1981年にジョン・エリクソン氏によって設立された米国を代表するCCRCの開発・運営会社で、「自立型住まい(インディペンデント・リビング)」では全米一の規模。
CCRCとは、自立型住まいから要介護になった際に「支援型住まい(アシステッド・リビング)」、さらに「介護型住まい(スキルド・ナーシング・ユニット)」へ移動できるシステムを有したシニアコミュニティを指す。日本でも日本版CCRCの取り組みが各地で始まっている。
エリクソンリビングは全米11州に19のCCRCを展開している(写真②)。今回訪問したグリーンスプリングはバージニア州にあるが、首都ワシントンDCの郊外として知られている。58エーカーの広大な敷地に1998年にオープンした、エリクソンリビングでは最大規模のCCRCである。
自立型住まいの部屋タイプはスタジオ、1ベッドルーム、2ベッドルームとタイプがいくつかある。入居時の一時金の90%は返還される仕組みになっている。
民間医療保険を持っているのが特徴で、エリクソンリビングのCCRCの入居者はエリクソングループの保険に加入することが可能になる。また、220以上のクラブがあり、様々なアクティビティーに参加できる。
費用は部屋のタイプによって金額が異なる。
・入居時一時金:15万ドル〜88万ドル
・月額支払い金:2000ドル〜3500ドル(2人目はプラス890ドル)
※2017年時点での金額
エリクソンリビングのCCRCでは、「エリクソンヘルスメディカルグループ」という形で老年医学の医師のグループを作っている。医療レベルが高いため、病院への再入院は低い。
ここでも、ヘルス&ウェルネスセンター(ジム)を設けていたり、敷地内にあるメディカルサービスセンターで医療サービスを提供したりしている。MD(Medical Doctor)やRN(Registered Nurse)が常勤しているので、当日の診察予約も可能である。このあたりは大規模な施設のメリットであろう。
スタッフも非常に親切で、我々の訪問に対して経営陣が順番にプレゼンテーションを行ってくれた。
参考文献:『平静の心—オスラー博士講演集』(単行本、2003年9月、医学書院)
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