15年目の悲願なるか
「成育基本法」成立の行方
「ついに悲願の法案が成立するかもしれない」。小児科医がそう期待するのが、秋の臨時国会での「成育医療等基本法(通称・成育基本法)」の成立だ。医療関係者の間でもなじみが薄い法案だが、5月に超党派の議連が立ち上がり、成立に向けた機運が整いつつある。成育基本法とは、胎児期から次世代を育成する成人期までの健康問題に継続して対応する重要性を定める法律。「母子保健法」「児童福祉法」などに分かれている子供に関する法律を統括する立場となり、「成立すれば子供の健康について国の方針が定まり、関連の法律の見直しも進むのではないか」と関係者は期待する。
日本医師会が「小児保健法」の仮称で法律制定の話し合いを始めたのは2004年に遡る。それ以来、15年にわたり、小児科医や最近では産婦人科医も必要性を訴えてきた。ただ、具体的にこの法で何かが変わるわけではないという理念法特有の地味さもあり、「議員に訴えても冷たかった。政権交代もあり、会ってくれない議員もいた」(小児科医)と不遇の時代を送っていた。
15年5月に河村建夫・衆院議員を会長に自民党の議連が発足、16年に小児科医の自見英子氏が日本医師連盟の組織内候補として参院議員に当選したこともあり、動きは加速。今年3月には自民議連が同法のたたき台を公表し、超党派の議連も発足したのである。「超党派のメンバーは100人を超えた。この機を逃してはならない」と関係者は力を込めるが、15年目の悲願なるか。
年金だけじゃなかった
「あの問題企業」に丸投げした厚労省
日本年金機構のデータ入力を請け負った情報処理業者「SAY企画」(既に解散)の入力遅れで年金の過少支給が起きた問題を受けて厚生労働省が行った調査で、業者と厚労省職員の馴れ合いの構図が明らかになった。調査によると、履行状況に問題があったのは同機構だけではなかった。労働基準局安全衛生部が3年契約で発注した「東京電力福島第一原発作業員の健康管理システムに係るデータ入力業務」では誤った入力が行われ、社会・援護局が委託した「戦没者等援護関係資料の電子化業務」では作業に大幅な遅れが起きていた。
担当記者は「戦没者資料の入力を巡っては、SAY企画と社会・援護局の職員の間に明らかに馴れ合いがあった」と語る。「SAY企画は2016年度の契約で期限までに納品が間に合っていなかったにもかかわらず、厚労省は17年度も契約を更新した。そもそも契約は遅くとも13年度から毎年続いており、金額も13年度に約1億円、その後も年8000万〜9000万円と高額だった」。
納品が間に合っていないのに翌年も契約するとは驚きだが、そもそも厚労省が16年度の契約をSAY企画と締結したのは17年1月と年度も終わろうという時期。そのせいか、厚労省職員は「年度内に間に合わなくても良い」と納品遅れを容認する発言もしていたという。「締結が遅かった割に支払いの方は速やかで、納品されていないにもかかわらず厚労省は16年度末には約8000万円の支払いを進める手続きをしていた」と担当記者。SAY企画もずさんかもしれないが、そんな業者に仕事を頼み続けた厚労省も問題だ。
同機構の問題を受け、厚労省は慌ててSAY企画に未履行業務の納品を求め、損害賠償請求も行った。だが、SAY企画は6月に債務整理手続きに入り、回収は絶望的だ。ずさんな業者と契約し続けた結果、昨年度の委託分はほぼ全てが納品されていない状態。これでは戦没者も浮かばれまい。
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