地域医療と先進医療共に充実を図る
177 千葉大学医学部附属病院「外来診療棟」(千葉市)
千葉大学医療系3学部(医学部、薬学部、看護学部)のある亥鼻キャンパスの高台に建ち、千葉市街を一望できる同大医学部附属病院(千葉大病院)。外来診療態勢の充実を図るため、同病院設立140周年に当たる2014年に、外来診療棟を新築。翌15年には改修工事により整形外科や患者支援センター、薬剤部なども加わりフルオープン。
設計のキーワードは「ガラス」と「木質材料」の調和。二つを調和させることで、医療の透明性と温かさを表現した。当時、副病院長として建設責任者の任にあった山本修一・現病院長は「患者さんにできるだけ明るく前向きな気持ちで受診してほしい」という思いから、設計会社に「病院ではなく、ホテルを参考にして設計してほしい」と要望。内装の木のぬくもりと、大きなガラス面から差し込む陽光は、患者に居心地の良さや安心感をもたらしている。
外来診療棟は地下1階、地上5階建てで、延べ床面積は約2万7000m²。1日の外来患者数は平均2179人(17年)、1日の救急車受け入れ台数は平均9台(同)。別途、千葉大病院が保有する自前の救急車も昨年は34回出動。主に患者を他院に搬送するのに使っている。
1階は神経系、2階は臓器系、3階は婦人科・糖尿病系、4階は耳鼻咽喉・歯科系、5階はがん系と関連診療科をフロアごとに集めた上、東側はグリーン、西側はオレンジとエリアカラーを施し、患者を案内しやすくしている。1階のホスピタルストリートは災害・有事用に医療ガス設備を備え、酸素吸入などの処置も可能な治療スペースになる。
また、同ストリートや2階のピアノのある休憩スペースでは、プロの演奏家や千葉大生などのボランティアによるコンサートも行われている。
がんは入院から通院の時代。千葉大病院でもがん患者の75%が通院で点滴や注射の治療を受けている。抗がん薬点滴などつらい治療に対して、患者の気持ちを少しでも和らげたいという考えから、「通院治療室」を一番見晴らしの良い最上階に設けている。ベッドとリクライニングチェアは計49床で、国立大学病院では最大規模である。
20年に放射線検査室や手術室などが入る新中央診療棟も完成、地域医療の一層の充実を図る。17年には臨床研究中核病院に承認されており、日本発の革新的な医薬品・医療機器の開発に向けて、国内で中心的役割を担う意気込みでいる。
LEAVE A REPLY