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未来の会

「健康経営」で生産性を高め、医療費も適正化

「健康経営」で生産性を高め、医療費も適正化
健康経営銘柄や健康経営優良法人になると「副次的な効果」も

政府は、経営的な観点から社員の健康作りを支援して経営効率を高める「健康経営」を企業に広めている。社員が健康的に働いて生産性を高められる他、就職の際に企業選びの参考になったり、金融機関から優遇措置を受けられたりするなど、企業の新たな評価ポイントになる可能性がある。中長期的には、医療費の適正化に繋げる狙いもある。

 「健康経営」導入に向けて積極的に旗を振ってきたのは、経済産業省だ。東京証券取引所と共同で、東証の上場企業を対象に「健康経営銘柄」として顕彰する制度を2014年に創設した。社員の健康管理を経営的な視点で戦略的に取り組んでいる全上場企業3640社を対象に調査し、原則的に1業種1社に限定して選定している。基準は①経営理念・方針②組織・体制③制度・施策実行、④評価・改善⑤法令遵守・リスクマネジメント——の五つの観点で調べる「健康経営度調査」で総合評価の順位が上位20%以内で、過去3年間のROE(株主資本利益率)の平均値が8%以上などの要件を満たすことが求められる。

 17年には、大和ハウス工業や味の素、伊藤忠商事、ブラザー工業など24社が選ばれている。特にローソンや花王、テルモ、TOTO、神戸製鋼所、大和証券グループ本社、東京急行電鉄、日本航空、SCSKは創設以来、3年連続で受賞した。さらに、同年に上場企業以外を対象にした「健康経営優良法人」制度も同様の基準で大企業向けと中小企業向けにそれぞれ新設した。

 安倍晋三首相は昨年3月の参院予算委員会で「企業とともに社員の健康づくりを企業戦略と位置付け推進する健康経営の取り組みの普及などを推進し、働く人々の健康管理や疾病予防に努めている」と述べるなど、後押しする姿勢を見せる。

 健康経営銘柄や健康経営優良法人に選ばれると、金融機関などから優遇される「副次的な効果」も期待される。

 東京海上日動火災保険は、優良法人の認定を受けた企業を対象に社員の業務上の怪我などを補填する企業向け保険料を5%軽減する。池田泉州銀行も、優良法人に選ばれた企業などに、金利を0・1%優遇する制度を設けるなど、同様の取り組みは全国的に広がっている。取引先企業の生産性や業績を健康経営によって向上させるのが狙いだ。

 経産省は経営者の視点から健康経営の導入を促すが、厚生労働省は健康保険組合を通じた取り組みを始めている。社員のメタボリック症候群を予防するため、特定検診や保健指導の実施率が基準を下回った健保組合に対して、高齢者医療への拠出金負担を増やす財政的なペナルティーを課す制度を創設した。対象となる企業では社員の保険料が上がる可能性があるため、厚労省は企業の健康作りを促す効果があると見込む。

 今後の課題は、大企業だけでなく、中小企業にも健康経営の視点を幅広く普及させることだ。

 経産省の担当者は「健康経営に認定されることで、新たな投資を呼び込んだり、金融機関の優遇措置を受けたりすることが出来る。社員に配慮した会社だと優秀な人材を獲得することに繋がるケースもある。好事例を紹介してメリットを分かってもらうことで取り組みを広げていきたい」と意気込む。

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