厚生労働省や医療界では医療制度改革や次期診療報酬改定に向けた議論が本格化している。9月に参院厚生労働委員会委員長に就任した島村大氏は歯科医師で、歯科診療所を複数経営する医療法人の理事長でもある。選挙区選挙を勝ち抜き、全国トップ当選しただけに、歯科医療だけではなく、厚生行政の新しい視野の示唆などが期待される。社会保障の在り方や医科歯科連携などについて聞いた。
——先の総選挙の結果をどう見ますか。
島村 解散した頃は、希望の党に勢いがあり、与党と国民の考えが離れているのではないかという懸念が相当ありました。その後、希望の党の勢いが萎む一方、立憲民主党の考え方や明快さが〝風〟に乗り、今回の結果になったと理解しています。そうした中で、政府与党として訴えたことは、アベノミクスの経済的効果などでした。残念なことですが、一部には実感がないという有権者の声もありました。
そこで、このアベノミクス政策をより実感して頂けるよう、さらに力強く実行していく必要性を訴えさせて頂きました。選挙の時期については、4年前の特定秘密保護法案、2年前の平和安全法制を可決成立させたことで、現在、海外から機密情報が入ってくるようになったわけです。そこで得た北朝鮮に関する情報を踏まえ、解散・総選挙へ踏み切るべきと判断をしたと理解しています。
——消費税の社会保障財源充当分を教育無償化へ充てるという総選挙時の自民党の公約で、社会保障の持続性を不安視する声が出ていますが。
島村 社会保険制度の中核である国民皆保険制度は世界に冠たるものです。昭和36年にスタートして55年以上が経過しました。さすがに半世紀以上経過すれば、制度疲労が出てきます。急速な少子高齢化による社会構造の変化が進む中では、当然のように保険制度改革が論議に上がります。
まず、必ず話題になるのが財源の問題。医療費高騰の理由として、高額医薬品や高度医療の増加が挙げられます。さらに言えば、終末医療の問題もあります。今まではタブー視されてきた問題です。難しい問題とは認識していますが、党内でも、そろそろ議論を始める時期に来ているのではないかと思っています。
もう一つは、国民皆保険制度の捉え方。現在は、疾病保険ですが、今後を見据えて、予防・健診などにも使えるようにする必要性はないのかということです。まずは、さらなる特定健診の充実化をどう図るのかということになります。健康寿命の延伸という視点から、検討の余地は十分あると思っています。実際、特定健診の中身を見ていくと健保組合の受診率は高いが、協会けんぽや市町村国保の受診率は低いのです。
その対応策として保健指導の充実もありますし、各健保組合の受診率を公開することで、低い組合はどう上げるか検討されると思います。ある企業では特定健診を受診しない時、今まではその上司が注意されていたのですが、変化があまりないので、受診しない社員を減給することにしたといいます。
労基法では給与には手を付けられませんが、賞与は可能ということで行うことにしたようです。それほど特定健診の重要性の理解は普及してきています。罰則自体の是非論はありますが、充実化の方向性は良いことだと思います。
北欧では健康は自己責任で維持・管理
——健康に対する自己管理も必要ですね。
島村 国民皆保険をどう守るかの議論では、医療費の削減、介護報酬の引き下げが俎上に上ります。そこで参考までに紹介したいことがあります。過日、スウェーデン、アイスランドを視察して来ましたが、特にスウェーデンが印象的でした。そこで、まず、「日本と国民性が違う」ことを指摘されました。スウェーデン人は自己の健康をどう維持するかを考えているのです。そういう意識は教育で涵養されています。
確かに北欧各国の医療は評価されていますが、一方でドライな点もあるのです。熱が出たので病院や診療所に行ってもすぐには診療してもらえず様子を見られるようです。その数日後、再度来院した時に、診療の可否を判断するのです。終末期医療でも、余命が短いと診断されれば治療しないという選択もあり、緩和ケアになるのです。国民がそれを受け入れているのも教育だといいます。
健康管理では、やはり予防が大切です。以上からも予防を保険制度に導入する必要があるのではないでしょうか。基本は疾病保険ですが、必要な部分には予防も導入して国民が健康になって医療費が下がることが望ましいと考えます。
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