SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

目的が混在する「地域医療構想」の課題

る医療提供体築」

医療提供体制改革の核である「地域医療構想」に対し、病院界から不安と懸念の声が出ている。新体制の構築だけでなく、「病床削減による医療費適正化」という厚生労働省の思惑が見えるからだ。

 地域医療構想は各都道府県が今春までに策定した。団塊の世代が後期高齢者になる2025年の必要病床数は計約119万1000床と、現状と比べ約8万4000床減少。病床機能別では、高度急性期が約13万1000床、急性期が約40万1000床、回復期が約37万5000床、慢性期が約28万4000床。現状と比べ高度急性期、急性期、慢性期が余剰、回復期が不足する。

 厚労省は25年までに地域包括ケアシステムの構築を目指しているが、地域医療構想で病院・病床機能を分化、必要な医療資源を確保し、患者を住み慣れた地域に返す「縦の連携」を進め、地域包括ケアシステムで地域に帰ってきた患者の医療の質を担保、必要な人には介護を地域でサポートする「横の連携」を進める。

 在宅医療の充実など地域医療構想で示された課題や対応策については、関係者で構成する地域医療構想調整会議で議論する。厚労省は構想推進の“アメ”として、病床転換する場合、都道府県に創設する地域医療介護総合確保基金から費用を補助したり、来年度の次期診療報酬改定で病床の機能転換や削減を誘導したりしていく。一方、“ムチ”として都道府県知事の権限を強化、病床削減の命令や勧告などに従わない医療機関に対して名称公表などのペナルティーを科す。だが、強硬手段は地元医師会との衝突に繋がりかねず、大半の都道府県は消極的だ。

 このような状況下、大幅な削減を迫られる急性期病院をはじめ、病院界から不安や懸念の声が出ている背景について、医療政策に詳しい三原岳・東京財団研究員兼政策プロデューサーは「地域医療構想の中に『病床削減による医療費適正化』と『切れ目のない医療提供体制の構築』という異なる目的が混在しているからだ」と話す。

 三原氏は課題として①日常的な医療ニーズをカバーする視点がない②都道府県と市町村の連携が不十分③住民自治・住民参加への取り組みが不十分④政策的な対応が現場のニーズとかみ合っていない──という4点を指摘する。

 これらの課題を踏まえ、三原氏は医療提供体制の構築の視点から、以下の4点を政策提言として挙げる。

 ①報酬制度やフリーアクセスの見直しなど、プライマリ・ケアの制度化

 ②プライマリ・ケアや在宅医療に関する市町村の関与を高めるため、市町村が策定する市町村医療計画制度(仮称)の導入

 ③住民自治・住民参加、合意形成の促進

 ④独自の診療報酬設定や地域医療介護総合確保基金の使途拡大、財政運営に関する都道府県の裁量拡大

 三原氏は「地域医療構想を踏まえ、医療計画を策定する際に、利害調整の過程が一部の計画者に委ねられると、集権的になる。行政には医師会や介護事業者など関係者を目的に向かって行動させる具体的な力がないので、医療計画の策定プロセスや内容の実現には関係者の主体的な参加と協力が必要だ」と述べた。その上で、「地域医療構想の策定では関係者との連携・協力を模索する都道府県が多かった。構想の策定を機に、地域の特性に応じた提供体制の構築に向けた議論が各地で盛り上がってほしい」としている。

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

COMMENT ON FACEBOOK

Return Top