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未来の会

第22回【アメリカ】医療の特徴としくみ

第22回【アメリカ】医療の特徴としくみ

医療の特徴

 米上院(定数100)本会議は2009年12月24日、オバマ大統領が内政上の最重要懸案に掲げる医療保険制度改革法案の採決を行い、民主党の賛成多数で可決した。

 連邦政府が民間保険会社や非営利組織と提携し、無保険者に新しい安価な保険を提供する。政府から距離を置き、かつ営利性を持たない組織での運用ということになる。

 すなわち、現在約4600万人の無保険者のうち、今後10年間で3100万人が新たにこの保険に加入する。

 そのことで、加入率は83%から94%に上昇し、事実上の国民皆保険が実現するとされた。

 しかし、トランプ政権になり、この公約は風前の灯火となってしまった。

 このように、政府の介入を強烈に嫌うのが米国の考え方なのである。

 この考え方の背景、及び現状を踏まえ、果たして米国医療はこのままやっていけるのか。また、そこから日本が学ぶべきものがあるのだろうか。

 一方では、米国の病院は、非常に激しく競争をしている。生き残りにかける努力は、日本の比ではない。

 さらに、医療が資本市場に組み込まれているために、いわゆる「聖域」では無かった。従って、一般の市場からの要求を直接に受けている。

医療の仕組み

 米国では日本のように国民が全て公的な医療保険に加入するという国民皆保険制度ではない。多くの人が民間の医療保険に加入している。

 民間保険では、公的保険のように誰もが加入出来るわけではない。リスクに応じて保険料が変わる。例えば年齢が上がったり、既往歴があると保険料が高くなったりする。

 一方、医療費全体の中での国の支出の割合は50%近くになる。米国の社会保障の中心となるのは、1935年に立法化されて37年に発効した社会保障法(Social Security Act)である。

 当初、この社会保障法は給与所得者の退職給付と一部の公的扶助のみからスタートし、1965年にはメディケア(高齢者向けの公的医療保険制度)、メディケイド(低所得者向けの公的医療制度)の採用など多くの改正を経て現在に至っている。

 1965年に65歳以上の人の公的な医療保険としてメディケアが成立した。同じ年に、生活困窮者に対する医療保障としてメディケイドが作られた。

 さらにメディケアは1972年の改正で対象は65歳才以上の者だけでなく、24カ月以上就業不能の者、腎臓透析、腎臓移植を必要とする者に拡大された。

 メディケアは全国単一の保険者であり、加入者は4700万人ほど。

 厚生労働省(HHS、 U.S. Department of Health & Human Services)の中の組織であるCMS(Cen-ters for Medicare & Medicaid Services)が運営にあたる。

 保険請求など事務手続きは、各州で事務を委託された保険会社やブルークロス(入院の保険を提供する病院組織)・ブルーシールド(手術費用や医師費用保険を提供する組織)などを通して行われる。

病院隣接のホテル

 米国の病院の平均在院日数は先進国の中でも非常に短い。これは、入院医療費が世界一高額であるということも相まって、長期に入院すれば膨大な医療費を請求されることに起因している。

 世界一のがんセンターといわれるテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター(MDA)の隣接地には、治療が長期にわたる患者や患者家族のために、MDAがマリオットホテルにマネジメントを委託しているホテルがある(写真①)。このホテルは患者や家族、あるいはMDAの関係者しか宿泊が出来ない。

 早期に退院する患者用に作られたともいえるホテル内には検査室が設けられており、MDAの従業員が常駐している。

 すなわち、翌日診察の場合には、前日の夕方にホテルで採血を行うことで、翌日には検査結果が出ており、診察の回数あるいは病院へ行く回数が減るというわけだ。

 このホテルとMDAの間には“橋”が架けられており(写真②)、外に出ることなく移動出来る。

 ただ、MDAがあるテキサスメディカルセンター(TMC)は約50の医療研究教育機関が集まる世界で最も大きな医療キャンパスなので、移動には徒歩で10分ほどかかる(途中シャトルバギーの利用も可能)。

 そういったわけで、患者の利便性を考え、ホテル内での採血が可能になっている(写真③)。

 また、医療的な相談もMDAの職員がその場で対応し、回答困難なものについては医師などに確認して返答する仕組みになっている。

 患者図書館やプールを備え、食事には素敵なレストランもある。雰囲気を考えると、病院に長期滞在するより、ホテルに滞在するというのも悪くない。

 ただし、繰り返しになるが、費用の問題が大きいことは言うまでもない。

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