文部科学省が頑張っている。
今年のセンター試験、国語の現代文第1問は科学技術に関する評論だが、設問4で選択肢5、設問5で選択肢2を選んだ受験生は「反原発」とみなされ、マイナンバーで登録されるのだろう。
キャラ化している最近の若者(2016年国語現代文)はそんなあからさまな踏み絵に引っ掛からないだろうが、政府に逆らう不埒な輩を見つけ出そうと、あちこちに罠を仕掛けているように思える。
熱心さに頭が下がる。
道徳教育にも気合いが入っている。
文部科学省の局長を早稲田大学教授として再就職させるなど、補助金の交付権限を握っている相手への天下りを全省挙げて隠蔽する見事な行政手腕を世間に見せ付けた。
優秀な役人が職務に忠実なあまり、嘘デタラメの筋書きを何度も書き換え練り尽くして作成した、口裏合わせのための「想定問答集 」なる作文がNHKの番組で紹介されていたが、これは「組織のために全力を尽くす」という、我が国の伝統的道徳的行為の極地だ。
作文というからには、きっと「文部科学大臣賞」を受賞するに違いない。
他の省庁でも、文部科学大臣賞を目指して、夜遅くまで居残りして立派な作文をお作りになっているのだろう。
国民として誇らしい限りだ。
新教科「道徳」の教科書にきっと取り上げられるはずだ。
「職員個人が組織のため、法律を犯しまでして先輩を天下り先へと毎年送り込むことは道徳に叶った『人助け』です。ばれて問題になった時の、相手方の学長の記者会見の要旨まで準備してあげたとしたならば、それはまさに菩薩行。皆さんもこんな『正しい大人』」になりましょう」
学習指導要綱には、
「『偉い人』がやることは全て許されます。よしんば裁判になっても裁判所も権力に迎合するからです。一方で、若い市長、中小企業のおっさん社長や中学校のバスの運転手などの地位では、何を言おうが即座にブタ箱に放り込まれます」
新教科では内部告発防止も重要な指導要綱に違いない。
「組織の善行、篤政、菩薩行を低俗なマスコミどもに面白おかしくチクる行為は反道徳的で、そんなことをしたら一族郎党未来永劫、村八分になります。マイナンバーで確実にトラッキングされます。気を付けましょう!」
組織のため、不利な事実は死んでも口外しない、ウソ、デタラメ、しらを切り通す。
それが「正しい国民」の道徳的生き方というものだ。
私は来月も、小学校や中学校から「生徒に話をしてほしい」と頼まれ話す機会があるが、こういった文部科学省の熱い熱い意向を尊重して、天下りの正当性や、「法律に触れるとは知りませんでした」と言い張ることの重要性などを盛り込んで、生徒達に分かりやすく説明したいと思う。
教科書の選定や教員採用についても数研出版や大分県の事例を紹介し、いかに教育現場が道徳的なのか、努めて説論したいと思う。
「正しい国民」の養成を担う文部科学省の道徳行政に、国民は大いに期待している。
いっそ、名称を「道徳省」とすべきだろう。
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