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がん患者の自立をサポートするため 予約・料金不要の「マギーズ東京」設立

がん患者の自立をサポートするため 予約・料金不要の「マギーズ東京」設立

秋山 正子(あきやま・まさこ)
1950年秋田県生まれ。1973年聖路加看護大学卒業後、関西で臨床と看護教育に従事。92年から訪問看護を開始。2011年「暮らしの保健室」開設、同室長。15年看護小規模多機能型居宅介護サービス「ミモザの家」を開設。16年10月マギーズ東京開設、同センター長。株式会社ケアーズ代表取締役、白十字訪問看護ステーション統括所長。NPO白十字在宅ボランティアの会理事長。著書に『つながる・ささえる・つくりだす 在宅現場の地域包括ケア』『家で死ぬこと考えたことありますか?』『在宅ケアのはぐくむ力』など。新しい医療のかたち賞、ヘルシー・ソサィエティ賞、 社会貢献者表彰。


2人に1人ががんを患う時代だ。訪問看護師の活動を都内で20年以上続けている秋山正子さんは、8年前、英国で誕生し、世界に広がりつつあるがん患者・家族の無料支援施設「マギーズセンター」の存在に感動。施設設立に奔走し、多くの人たちの資金協力を得て、今秋、東京・豊洲に「マギーズ東京」を設立するに至った。その目的、日本のがん患者のケアの課題や在り方について伺った。

——がんに関心を持ったきっかけは?

秋山 1989年に、二つ上の姉をがんで亡くしました。そのとき、がん患者さんと家族が自宅で過ごす時間がいかに大切かを強く感じました。がんになっても家で過ごしたいという人のために看護を届ける仕事がしたいと思い、92年に訪問看護を始めました。以来、がんに対しての関心がますます強くなっています。

——長く訪問看護をして気付いたことは?

秋山 がんの治療は時代とともに外来中心に変わってきました。がん患者さんは病院で次から次へと、あらゆる治療を言われますが、末期を迎えると治療がなくなり放置される感じがありました。そのような患者さんの残り少ない時間に、訪問看護が行われるようになってきたのは2000年頃からです。緩和ケアも含め、もう少し早期に在宅医療が入ってもいいのではないかと思っていました。病院で末期状態となり、看取りの期間に初めて訪問で入らせていただくのは、私たち以上に、ご本人やご家族が大変です。

——「マギーズセンター」を知ったきっかけは?

秋山 08年の国立がん研究センターのセミナーに、英国マギーズセンターのアンドリュー・アンダーソン・センター長がゲストスピーカーとして来られました。私も日本のがん患者と家族へスピスケア支援者として呼ばれ、同じテーブルに座っていたのです。私は日本のがん患者の現状を話し、アンドリュー氏は英国で始まったマギーズセンターについて話しました。その内容を聞いたとき、衝撃を受けました。日本でも今すぐにマギーズセンターのような施設が必要だと感じました。スピーカーである私自身も手を挙げて、どうやってつくるのかなどを質問したほどです。

——日本のがん患者ケアに不足しているものを感じていたのですね。

秋山 病院では外来期間が長くなり治療のスピードがアップすると、患者さんは立ち止まって考えて医師と話をする機会がなかなかありません。また、本人と家族が病気に対して別の考え方を持っているのに、医療者を交えて話し合える時間も場所もないことがあります。がんの診断を受けたなら、治療法やこの先の人生をきちんと話し合った上で、本人がどうしたいかを決めて先へ進んでいくことが必要なのに、病院ではその時間を取ることができないのです。患者さんはどこに相談したらいいのか途方に暮れ、不安を引きずったまま最期を迎えるのが現状です。今は以前と違って、がんを治療しながら仕事をして家庭生活も送るなど、発症してからの期間が長いのに、がんを患っている期間中の「相談場所」がないわけです。

——それが「マギーズ東京」の設立につながる?

秋山 そうです。家庭的な雰囲気の中で、がん患者さんと家族、友人、がんに関わる全ての人たちに、いつでも相談の機会が開かれている場所。それをぜひとも日本につくりたいと思いました。私はすぐに英国のマギーズセンターへ見学に行き、がん患者さんのために必要だと確信しました。それからいろいろな場所や紙面でマギーズの情報を発信したのです。一方で、現在、NPO法人マギーズ東京共同代表を務める鈴木美穂さんは、私がアンドリュー氏と出会った08年にがんの診断を受け、治療がスタートしました。治療の最中は、死にたいほどにつらい思いをして、ご家族も病気になるくらい大変だったそうです。

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