浜 六郎 NPO法人 医薬ビジランスセンター(薬のチェック)代表
名古屋市は、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)に関する調査データを本年6月pdfファイルとして開示した。当センターが解析した第1次結果をシンポジウム(10月16日開催)で報告した1)。事実上撤回された名古屋市速報(2015年12月)とは全く異なり、HPVワクチンの害は重篤かつ高頻度である。要約を報告する(詳細は薬のチェックTIP2)参照)。
名古屋市調査の概要
名古屋市は、15年9月、94〜00年生れ(15〜21歳)の女性約7万人を対象に、郵送法でアンケート調査を実施。主な質問項目①HPVワクチン接種有無、接種時期、②26種類の症状の有無、症状発現時期につき、本人あるいは家族(両者)が回答した。接種後の症状発現頻度を、接種群と非接種群とで比較した後ろ向きコホート研究として設定できる。回答数は3万793人、回答率は43.4%であった。
当センターにおける解析結果
開示pdfファイルをtextファイルに変換し、excelファイルに取り込み整理。接種者は合計2万1007人、非接種者9559人、不明52人。接種割合は全体で62%、00年生れ15%、99年50%、98年70%、97年84%、96年〜94年は87〜89%であった。
主な解析方法
①有症状割合を生年別・接種有無別に求め比較(病者除外バイアスの影響を検討・排除)。
②第1回目接種以降を接種後症状と特定。
③生年別接種群の平均接種時期を非接種群の起点(index date)とし起点後の症状を特定。
④非接種群(94〜97年生れで接種割合80%超)では病者除外バイアスが特に大と判明。
⑤00/99年生れの非接種群(接種割合50%以下でバイアス小)を対照群としオッズ比計算。
主な結果
接種(起点)後の主な有症状割合を接種群、非接種群(99+00年生)でみると、記憶困難1.7 vs 0.8%,単純な計算ができない0.5 vs 0.13%、不随意運動0.6 vs 0.3%、普通に歩けない0.2 vs 0.03%。オッズ比(95%CI、p値)はそれぞれ、2.2(1.6-3.1、<0.0001)、3.7(1.8-8.7、0.0002)、2.1(1.2-3.8、0.005)、7.0(1.8-59、0.0017)。接種群の「杖/車椅子が必要」になった20人は他の25種類の症状中平均12症状を併発していたが、非接種群(全年齢)にいた1人に他の症状は全く併発していなかった。20人中6人は現在も杖/車椅子が必要である。各種症状が重層した上、杖/車椅子が必要な人のオッズ比は30.3(2.4−∞、P=0.001)。
全国でこれまでにHPVワクチンの接種を受けた340万人では、3000人以上が接種後「杖/車椅子が必要」になり、1000人が現在も必要と推定される。
接種後の危険度は、上記でも過小評価である。例えば、簡単な計算ができなくなった人の50%以上は接種から除外されていた可能性があるので、オッズ比(3.65)は2倍になる可能性がある。
結論
HPVワクチン使用と認識/運動機能に関する症状発症との間には有意な関連がある。重篤な後遺障害につき、詳細な調査、追跡調査、被害救済を要する。
参考文献
1) 薬のチェックは命のチェック速報
http://www.npojip.org/contents/sokuho/1.html
2)薬のチェックTIP68号(2016年11月)
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