やはり大量にいた
〝不正〟精神保健指定医
処分を待つ間は不安だろうが、〝仲間〟が大量にいるとなれば、少しは心細さも薄れるのか。その辺りの精神構造は不明だが、精神疾患患者の措置入院の要否や身体拘束の必要性を判断する「精神保健指定医」の資格を不正に取得していた疑いがある精神科医が約100人に上ることが9月初旬に報じられた。
担当記者によると、厚生労働省は本人から言い分を聞く「聴聞」を行っており、秋には医道審議会が開かれて資格停止などの処分が下されそうだ。
不正取得といえば、昨年4月、聖マリアンナ医科大病院で複数の医師が同じ患者の症例を使い回して資格取得に必要なレポートを不正に作成していたことが発覚。厚労省は不正申請をした11人とレポートに承認のサインをした指導医12人の計23人の資格を取り消したが、今回の大量の不正が発覚したのもこの騒ぎの延長線上という。過去5年分をさかのぼって同様の不正がないか調査していた厚労省が、全国の医療機関で同様に資格を不正取得していた例を見つけた。
前出の記者は「感染症などの分かりやすい医療に比べ、精神科医療はニュースの扱いが小さくなるのが通例」という。ところが、今回は神奈川県相模原市の障害者施設で7月、19人を刺殺したとして殺人容疑で逮捕された植松聖容疑者(26歳)の措置入院の判断に関わった指定医4人のうち1人が含まれていたことから扱いが一気に大きくなった。
ただでさえ、植松容疑者の退院時に大麻使用について報告していないなど厳しい目にさらされている精神科。重要な資格を不正取得していたとなれば、植松容疑者の〝精神疾患〟を正しく診断できていたのか、入退院の判断は正しかったのか、信頼性は揺らぐ。裁判では容疑者の精神鑑定が行われる可能性が高いが、鑑定を行うのも精神科医。その仕事ぶりに厳しい目が注がれるだろう。
メディアが報じなかった
戦没者追悼式の「天皇陛下万歳」
戦後71年目の夏、メダルラッシュとなったリオ五輪のお祭りムードも手伝い、メディア各社の扱った「戦争」の記事は、70年の節目だった前年から大きく減少した。そんな中、天皇陛下が生前退位への強い思いを示されたビデオメッセージ後、皇居外で取り組む初の公務となった日本武道館での全国戦没者追悼式で、一つの珍事件が起きた。
参列者が証言する。「遺族代表による追悼の辞が終わって天皇、皇后両陛下が退席されるとき、会場のどこかから『天皇陛下、万歳』と掛け声が上がったのです」。掛け声に応えるように、3階席まで埋まった全国の遺族たちから大きな拍手がわいたという。
会場からの大きな拍手に、陛下は遺族席に目を向けることで応えられたという。式典を主催する厚生労働省は突然のハプニングにさぞ肝を冷やしただろうが、参列者は「会場からの拍手は長年、戦没者遺族に深い思いをかけられた陛下に対する感謝の気持ちだったのでしょう」と涙ぐむ。
ところが、この珍事を報じた大手メディアは皆無。ある大手紙記者は「先の大戦では天皇が神格化され、『天皇陛下、万歳』と言いながら玉砕していった兵士も少なくありません。会場から飛んだのが、『陛下、ありがとう』という言葉だったら、記事にしたかもしれませんが」と言葉を濁す。
陛下がお言葉の段取りを間違えられたのは前年の戦没者追悼式。陛下は会見で自らこの例を挙げて、年齢による衰えについて語られた。陛下と共
に年を重ねてきた遺族たちが長年の感謝を込めて拍手を送ったことは、71年目の夏の記憶として語り継がれるにふさわしいのではないか。
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