SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

イオン

イオン
傘下のドラッググループ企業だけでな イオンでも薬歴未記載が

 明暗が分かれた「小売り2強」。2015年2月期決算で、セブン&アイ・ホールディングス(HD)は過去最高の営業利益を出す一方、イオンは3期連続の営業減益だった。ダイエーを完全子会社化するなど規模の拡大を推進してきたが、主力のスーパー事業を再建できないでいる。

 売上高こそ国内外の出店や買収などで前期比10.7%増の7兆785億円と過去最高となった。しかし、営業利益は17.5%減の1413億円で、純利益に至っては7.7%減の420億円しか出せなかった。

 一方で、セブン&アイHDの売上高は前期比7.2%増の6兆389億円、営業利益は1.1%増の3433億円と過去最高となった。

 イオンは総合スーパーを全国に約600店舗展開。ドラッグストアや食品スーパーの買収、ダイエーの完全子会社化と規模の拡大路線を推進してきた。しかし、少子高齢化で消費者の購買力が低下している上、画一的な売り場や魅力に乏しいプライベートブランド「トップバリュ」は客離れを招いた。利益の柱は、ショッピングモールを手掛ける不動産開発事業や総合金融事業が担っており、本業である総合スーパーという業態は限界を露呈している。

元薬剤師が薬歴未記載を内部告発

 イオンの総合スーパー事業の挫折には現場軽視、本部中心の中央集権体制に原因があると指摘される。一方、中央集権体制に組み込もうにもできないのが、ドラッグストア事業だ。グループに取り込んだチェーンドラッグストアは、コーポレート・ガバナンス(企業統治)やコンプライアンス(法令順守)とは縁遠い新興業態で、もともと個性的なオーナーが率いていた個人商店の色彩の企業だからだ。

 いずれも調剤部門への進出で巨利を得ていたが、調剤薬局として最低の不祥事を起こす企業が相次いだ。薬剤服用歴(薬歴)の未記載だ。患者から聞き取ったアレルギー、過去の副作用経験、服薬中の体調、併用している処方箋などをメモし、パソコンにインプットしなければいけないのだが、それをせずに、1件につき41点(410円)の調剤報酬を請求していたのだ。

 イオンの子会社「CFSコーポレーション」傘下の調剤薬局「ハックドラッグ」で約8万件、イオンが13%の株式を保有し、イオンが主宰する「ハピネス」に加わる「ツルハホールディングス」傘下のドラッグストア「くすりの福太郎」で約17万件の薬歴未記載が相次いで発覚した。「利益優先、薬歴後回し」の経営姿勢は「詐欺」との批判も浴びた。

 イオンも調剤薬局を店舗内に設置している。こちらも薬歴未記載をしていたとの情報(内部告発)が、元薬剤師から編集部に寄せられた。

 日本を代表するグローバル企業の東芝でさえ、企業統治、法令順守が不在であった。不正会計事件も内部告発で明らかになっている。歴史も浅く、業界首位だったダイエーの破綻とその後処理もできない流通小売業界にあって、量的トップであるイオンの経営体質に大きな問題があることがますます明らかになっていることも、やむを得ないといえる。しかし、その社会性を無視した経営や法意識の欠如には驚くばかりだ。

 前出の元薬剤師を仮にAさんとする。

 Aさんは「イオンの薬歴未記載件数も、くすりの福太郎に劣らないはず。本部から『薬歴は1カ月以上溜めないように』との通達がメールで来るぐらいだった。私が勤めていた店舗だけでも、当初、未記載の薬歴が大量にあった」と打ち明ける。

 薬歴未記載の問題だけではない。薬剤師の勤務環境の悪さについてもAさんは指摘する。

 「調剤事務がいない一人薬剤師の勤務状況で、レジが混めば調剤を中断してレジを行き、戻って調剤を行うような環境だった。特に顧客感謝デーや月1回の棚卸しでは人の手配のない中、仕事に追われた」

 「調剤室はガラス張りなのに、ガラス越しに無理やりコミュニケーションをとろうとする上司や大衆薬の説明を求める患者に対応しなければならなかった。気力はすり減っていった」

 「薬剤師以外の仕事もあり、直通の社内用のPHSに現場と売り場の固定電話と、何台もの電話を薬剤師が管理するのが当たり前だった」

 「ヘルプの制度がない中、年中無休で午前中から夜までの営業を数人で回していた。労働基準法(以下、労基法)に敏感な会社だったので、従業員には休憩や有給休暇、長期休暇をきちんと取らせた。そうすると、常に人員不足の状態で、一人薬剤師で無理やりシフトをつなげて、朝から夜遅くまでの営業をしのいでいた店舗もあったという」

 「健康面も最低で、冬になれば、患者がいるにもかかわらず、冷蔵庫のような調剤室で調剤するのが当たり前だった」

調剤過誤を誘発させる環境

 業務過多の中でも、イオンは薬剤師の文化にある「予製剤」(患者が来る前にあらかじめ作り置きする薬)を認めなかった。それに加え、働きづらい職場環境だ。結果、ヒューマンエラーによる調剤過誤が起きたという。Aさんは「過誤が多発する環境などがあり、中には健康被害が表れるケースもあった」と話す。

 Aさんは「同僚が困っていても助けない、強く主張する人の意見が通る社風。精神的にまいってしまう人もいた」と振り返る。

 Aさんの情報は、イオンが労基法を守ることをスタンスとしながらも、コスト極小化政策ありきで、実質的に労働環境の劣悪化と労基法違反を招き、薬事法で定められた健全な調剤業務が遂行できるはずもないことの矛盾を明らかにした。そして、薬歴未記載という違法、詐欺行為、調剤過誤の隠ぺいという違法行為を招来している組織システムの実態も浮き彫りにしている。監督官庁は勤務表を調査すれば、一人調剤の実態がすぐ分かり、まともな調剤業務遂行が不可能なことも把握できるはずだ。

 このような会社が、企業統治、法令順守の精神から遠いチェーンドラッグストアグループを率いようというのだ。イオン自らも昨夏、元執行役の平林秀博氏がダイエー株のTOB(株式公開買い付け)の際、インサイダー取引事件を起こして辞任している。

 また、子会社のウエルシアホールディングス(HD)では、同社の子会社のウエルシア薬局の元取締役で、静岡市長選で落選した高田都子候補陣営が公職選挙法違反容疑(買収事件他)を起こし、高田氏の実兄で選対本部長だったウエルシアHD副会長・ウエルシア薬局取締役だった高田隆右氏が逮捕された。

欲にくらんだドラッグのトップたち

 また、旧寺島薬局(現ウエルシア介護サービス)買収直後に解任した元社長、元副社長、元常勤監査役から起こされた不当解任による損害賠償訴訟問題がある。同社の当時のオーナー、寺島孝雄氏がウエルシアHDの故鈴木孝之・名誉会長にTOBを持ち掛け、市場価格の3倍近い高値で売り抜け、数十億円の巨利を得た。インサイダー取引・株価操縦疑惑が持たれている問題で、経緯を知る元社長らは口封じのために不当解任されたといわれている。

 利にさとい人物たちだけに、さまざまな場でその名前が挙がっている。以下は一例だ。

 茨城県つくば市の市原健一市長が305億円をかけて総合運動公園を整備する計画を打ち上げたが、8月に行われた住民投票で反対が8割を占め、計画は白紙撤回された。そもそも、新国立競技場の建て替えでも巨額な建設費が問題視される中、時代錯誤といえる計画だった。

 同市は筑波研究学園都市の建設で発展した新興都市。有力企業がないためか、市原市長の後援会幹部は、同県南部の要の都市で、隣接する土浦市の建設業者が名を連ねている。また、両市では合併を視野に入れた勉強会も開いている。つくば市民の一人は「総合運動公園の建設は、後援会の建設業者を潤すための計画だったのではと、勘繰られてもやむを得ない。それが今回の住民投票の結果だ」と話す。

 市原市長は医療法人健佑会理事長で、元茨城県病院協会会長。県議会議員を4期務めた後、04年につくば市長選に出馬・当選し、現在3期目を務めている。

 地元事情通によると、市原市長に前述の寺島氏が一時期毎月数十万円を支援していたという。また、同県筑西市の市長の後援には鈴木氏が関わったといううわさもある。

 いずれにせよ、イオンのコーポレート・ガバナンスの脆弱さ、コンプライアンス意識の希薄さとともに、同社や傘下のドラッグストアの社会的無頼さを示しており、それに群がる周辺も含めまさに〝魑魅魍魎〟横行の様相を呈していると言わざるを得ない。

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

COMMENT ON FACEBOOK

Return Top