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第90回 厚労省人事ウォッチング
厚労官僚が頼る「TKG」とは?

第90回 厚労省人事ウォッチング厚労官僚が頼る「TKG」とは?
田村憲久元厚労大臣(公式HPより)

 厚生労働省の官僚が現在、何かと頼りにするのが「TKG」だ。省内で使われている隠語だが、何れも厚労大臣を経験した有力族議員の頭文字を取ってそう呼ばれている。ただ、それぞれ得意分野が有る様で、頼る場面は微妙に異なる様だ。

 TKGは、田村憲久元厚労大臣の「T」、加藤勝信財務大臣の「K」、後藤茂之元厚労大臣の「G」を差す。改めて3人の「現在地」を確認したい。

 先ずは田村氏だ。TKGの筆頭に位置付けられている様に、現在でも厚労省がファーストチョイスとする族議員だ。厚労大臣を2度務め、厚労省に対する影響力は大きい一方、党内ではパッとしない印象だ。当選は10回を数え、嘗て派閥の長として仕えた石破茂氏が総理大臣を務めているのに、現在の主な役職は党社会保障制度調査会長ぐらい。冷や飯を食わされている感じは有るが、厚労官僚は何か有れば、根回し先として真っ先に田村氏の下へ日参している。

 それでは厚労大臣を3度経験した加藤氏はどうか。昨秋の自民党総裁選では最下位の9位に甘んじた。只、官房長官として支えた菅義偉前首相が石破政権で副総裁を担っている事も有り、財務大臣に起用された。迷走を重ねた高額療養費制度の見直し問題では、福岡資麿厚労大臣に水面下で助言する等、政権幹部の顔を覗かせる。只、厚労省幹部は「加藤氏は現職の財務大臣。厚労省の案件ばかりに時間を割いて頂く訳にはいかない」と漏らす等、田村氏程足繁く通っている訳では無さそうだ。それでも、節目では厚労省案件を報告し、助言をもらう場面も少なくない。

 田村氏や加藤氏はこれ迄も何かと頼りにされて来たが、ここに来て台頭しているのが後藤氏だ。厚労大臣時代は、コロナ下だった影響も有るが日付が変わっても官僚レクを続行し、職員から不評を買った。その後、全世代型社会保障改革担当大臣を兼務する経済再生担当大臣を歴任する等、社会保障分野への造詣を深めて行った。党税制調査会では小委員長代理を務める傍ら、党医療委員長や党雇用問題調査会長にも収まる等、政策のウイングを広げている。

 ある幹部は「これ迄後藤氏は田村、加藤両氏に比べ、プライオリティは低かったが、現在は肩を並べつつある」と明かす。只、医療委員長として関わった高額療養費制度の見直しは保険局から相談を受けていたが迷走を止められず、存在感を発揮するには至らなかった。大手紙記者は「迷走は基本的に保険局の失態だが、党医療委員長として患者団体のヒアリングの実施等、指摘出来た事は有ったのではないか」と指摘する。

 TKGは誰が呼び始めたかは定かではないが、幹部を中心に徐々に省内で広がりつつある様だ。只、TKG頼みになるのは、橋本岳氏や渡嘉敷奈緒美氏ら社会保障制度の次代を担う中堅・若手の衆院議員が先の衆院選で落選してしまった影響も大きい。

 田村氏は現在60歳、加藤氏と後藤氏は共に69歳だ。田村氏はやや若いが、何時まで頼りに出来るかは分からない。中堅・若手の台頭が無ければ、良質な社会保障制度の維持も難しくなる。TKGや厚労省幹部には新たな人材の育成も同時に求められるだろう。

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