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未来の会

日本の医療の信用失墜を心配する内閣府

日本の医療の信用失墜を心配する内閣府

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美容医療のトラブルが止まらない

美容外科クリニックにおける顧客とのトラブルは依然として後を絶たず、消費者庁にも多くの苦情が寄せられている。消費者庁が発表したデータによれば、美容医療サービスに関する相談件数は年々増加傾向にあり、2022年度には3,000件を超えたという。この数は過去5年間で最多となっており、深刻な問題であることが分かる。また、消費者庁が所管する国民生活センターは、2023年の美容医療に関する相談件数は前年比170%増の6,264件と急増したとHPに示す。相談内容は様々だが、特に目立つのは、消費者の不安を煽るような宣伝や勧誘、施術のモニター契約を条件とした大幅な割引によって即日契約を促すケースだ。こうした営業手法により、消費者が冷静な判断をする余裕がないまま施術を受け、後になって後悔するケースが後を絶たない。また、先端医療としてアジアの富裕層に人気となっている自家脂肪の培養による再生医療もトラブルが絶えない。中には1,000万円を超える高額なメニューもあり、帰国後に、「効果が見られない」として外国人患者との間での訴訟に発展するケースもある。日本政府としても日本の高度な医療の信用失墜に繋がると放置が出来ない所まで来ている。美容医療は自由診療であるため、厚生労働省の直接的な監督下にはなく、結果として消費者庁に苦情が集中する現状が続いている。では、この問題をどのように解決すればよいのか。

まず、美容医療を受ける際の「事前説明」を徹底し、消費者が納得した上で契約を結ぶ仕組みを強化する事が重要だ。施術のリスクや副作用、費用の詳細、想定される結果等を丁寧に説明し、消費者が十分に理解した上で同意を得るプロセスを整えるべきだ。この説明が不十分であれば、施術後に「聞いていなかった」「こんなはずではなかった」というトラブルが発生しやすくなる。

また、消費者を保護する制度として、クーリング・オフの適用範囲を拡大することも検討すべきだ。現在、一部の契約にはクーリング・オフが適用されるが、美容医療に関しては制度が十分ではない。契約後一定期間内であれば、無条件で解約が可能となる制度を整える事で、衝動的な契約や過度な勧誘による被害を未然に防ぐ事が出来るはずだ。

更に、自由診療であっても何らかの監督機関を設置し、美容医療を提供するクリニックの監視を強化する事も必要と言える。現状では、悪質なクリニックが野放しになっているケースも少なくない。施術の質を確保し、消費者の安全を守るためにも、適切な規制の下でクリニックの運営を管理する仕組みを整える事が望まれる。また、消費者側への情報提供も欠かせない。美容医療にはリスクが伴う事、契約には慎重になるべき事、誇大広告に惑わされない事など、基本的な知識を広める事で、トラブルの発生を減らす事が可能になる。国民生活センターや消費者庁が発信する情報を活用し、積極的に注意喚起を行うべきだろう。

トラブル発生時の相談窓口の整備と周知も重要な課題である。消費者庁の「『消費者ホットライン』188」などの相談機関の存在をより広く知らせる事で、被害に遭った際の救済手段を確保しやすくする事が求められる。加えて、美容外科業界の団体が自主的にガイドラインを策定し、適切な施術や勧誘を行うように指導して行く事も、業界全体の質の向上に繋がると消費者庁は考えている。更に、悪質なクリニックに対しては法的措置を講じる事や、被害者への支援体制を強化する事も必要だ。悪質と判断された場合には、クリニック名を公表し、更なる被害者を防ぐ事も求められる。悪質な業者が市場に残り続ければ、美容医療全体の信頼が損なわれる事になりかねない。被害者発生を防ぐ対策を講じる事で、美容外科クリニックにおけるトラブルを減少させ、消費者が安心して美容医療サービスを受けられる環境を整える事は業界と消費者の双方に取って有益だ。厚労省は、医師免許は神聖なものと考えているが、ここまで問題が深刻化するとその考えにも変化が生じる兆しがある。美容外科クリニックの自助努力が待たれる。


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