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未来の会

第178回 ◉ 浜六郎の臨床副作用ノート
ドナネマブは無効・脳出血死増

第178回 ◉ 浜六郎の臨床副作用ノートドナネマブは無効・脳出血死増

アルツハイマー病用のモノクローナル抗体ドナネマブ(ケサンラ®)が2024年9月に承認され、11月20日には保険診療が開始された。レカネマブ(レケンビ®)に次いで2剤目である。早期にアミロイドβを取り除くことを理由に、1年間に要する薬価がレカネマブよりも5%高く設定された。その価値の真偽を検証した。概略は共同通信社からの配信記事1)、薬のチェック番外編2)で速報した。なお、詳細は薬のチェック117号(2025年1月発行予定)3)に掲載予定である。

認知機能悪化を最大29%抑制と主張

ドナネマブの第3相試験は、ドナネマブ群853人と、プラセボ群874人を対象として、iADRSを主要評価指標、CDR-SBを副次評価指標として、1年半後の結果で評価された。認知機能の悪化をドナネマブがiADRSで22%、CDR-SBで29%を抑制したとしているが、最も評価が確立しているMMSEによる評価では16%抑制にとどまった。後述するように脱落を考慮すると結果は信頼できない。

目立つ脳出血とそのための死亡

ドナネマブの最大の害は出血性脳卒中と、それによる死亡である。レカネマブでも試験終了後に脳出血死亡が報告されたが統計学的検討はできなかった。しかし、ドナネマブの第3相試験では、ドナネマブ群853人中、出血性脳卒中(脳内出血、くも膜下出血、硬膜下血種など)を14人が起こし、うち4人が死亡。プラセボ群に出血性脳卒中はいなかった。

ドナネマブ群では約60人に1人が出血性脳卒中を起こし、約200人に1人が出血性脳卒中で死亡したことになる。ドナネマブによる出血性脳卒中のオッズ比は30.21(p=0.0004)、出血性脳卒中死亡のオッズ比は9.26(p=0.0596)。未回復の5人から1人でも死亡すれば統計学的に有意となる。

血管の補修成分を除去し出血

薬のチェック誌で、これまでにも強調してきたが、アルツハイマー病の人の脳では、過剰な酸化ストレスのために、ニューロンだけでなく血管平滑筋細胞も壊死し脱落する。その脱落部をアミロイドβで補修している。組織損傷を補修している、いわば「修理部品」とも言えるアミロイドβをドナネマブが取り除いたのである。そのために、血管が破綻し、出血を起こしたと考えられる。

脳浮腫・微小脳出血で多数が試験から脱落

MRIでとらえられた脳浮腫(ARIA-E)や脳出血(ARIA-H)が、ドナネマブでは3人に1人以上生じ、レカネマブ(約6人に1人)より多かった。そのため、認知機能の判定ができなかった例が、レカネマブではプラセボ群の39%増しであったが、ドナネマブでは44%増しと多かった。

みかけの効果は低い認知能の人が脱落したため

ドナネマブによる脳の浮腫や出血は、アミロイドβがたくさん溜まった認知症の進んだ人ほど多く起こっている。そのため、試験から脱落した人は、もともと認知機能の低い人であった。その動かぬ証拠が米国規制当局FDAの公表データで確認できた。したがって、認知機能の悪化を最大29%遅らせたとのメーカーの主張は信頼できない。

レカネマブを「効果がリスクに見合わない」と未承認の豪、制限付き勧告段階のEU、2剤承認だが公費象外の英など、国により対応が異なる。

結論

無効かつ、出血性脳卒中死を増やすレカネマブは、使ってはいけない。

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