10月の臨時国会を経て石破内閣が発足し、新しい厚生労働大臣に福岡資麿・参院議員が選ばれた。昨年9月に就任した武見敬三・参院議員は僅か1年で退任した。武見氏が就任した当時、厚労省内では「まさか武見氏が大臣に選ばれるとは」との受け止めが広がっていたが、今回は「順当な人選だ」と評価する職員が多い様だ。
福岡氏は佐賀県選出の参院議員で当選は3回。2005年に衆院佐賀1区で当選し、その後落選して参院に鞍替えしている。1973年生まれの51歳。慶應義塾大の剣道部では、橋本岳・衆院議員と同期でしのぎを削った仲だ。卒業後は三菱地所を経て、国会議員に転じた。
医療や介護に詳しく、自民党厚労部会長や参院厚労委理事、参院議員運営委員長、参院政策審議会長、内閣府副大臣等を歴任した。党厚労幹部会のメンバーにも名を連ね、特に尾辻秀久・参院議長にかわいがられた様だ。厚労分野の有力者の声掛けで省内の職員を集めた勉強会を作る等、早くから準備を整えて来た経緯も有る。一部で労働分野の国会答弁を不安視する声も無くはないが、厚労分野に詳しい関係者からは「次の大臣候補の筆頭は福岡氏だろう」と目されて来た。
参議院ということもあり、元首相を父に持つ橋本氏らに比べて地味な存在ではあるが、国会対策等で堅実な仕事振りが評価されている。厚労省の中堅職員は「政策もきちんと理解されており真面目。変な指示が飛ぶ事は無いだろう。ただ指示は細かい」と言う。専門誌記者も「調整型で無謀な事にチャレンジしないタイプ。慣例や経緯を気にし、悪く言うと官僚の様な印象も受ける」と明かす。タカマロ(資麿)という珍しい名前から陰では「マロちゃん」↘「マロ」とも呼ばれているという。
就任の挨拶では「実質賃金の増加を実現すると共に、人生の多様な選択を実現出来る柔軟な社会保障制度を構築し、全ての人に安心と安全をもたらすよう、全力で取り組んで参ります」と述べ、無難にこなした。
一方、退任する武見氏は就任当初、国会答弁等で不安視する声が有ったが、大きなトラブルも無く、大臣の就任期間を終えた。就任当初は官僚による↖レクの度にA4用紙1枚のレジュメを別途作らされた為、官僚からは「余計な仕事が増えた」と不満も漏れていた。とは言え、無難な国会答弁が続く様になると、そうした不満は次第に消えて行った。
武見氏は退任会見で「1年余の期間、大過無く厚生労働行政の仕事を私なりに完結させる事が出来た。特に、今までコロナ禍の対応に追われ、受身であった厚労省の職場の、言わば体質と言ったような物を兎に角攻めに変え、更にそれが厳しく辛い嫌な雰囲気ではなく、明るく大きな仕事をやれる職場の雰囲気を作る事に、最大限努力をしてきた。実にこの1年間、気持ち良く仕事をさせて頂いた」と述べた。過去の大臣に比べ、武見氏に対してそれほど多くの不満が漏れないのは、こうした氏の「気遣い」も影響しているのだろう。
福岡氏は参院議員とは言え、10月末に衆院選を終えてからが本格始動になると言えよう。年末の予算編成まで時間も短く、公的年金制度の改革といった難題も待ち受けている。手腕が問われる時期は早々に訪れそうだ。
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