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未来の会

【「集中」の是々非々 61 】

【「集中」の是々非々 61 】

【患者代表を中医協に加える事の意義と必要性】

「患者満足度の高い医療の提供をより実現するために」

この記事(1,631文字)は140秒でお読み頂けます。

医療制度の維持と改善を図る日本の医療保険の運営において、重要な役割を持つのが「中央社会保険医療協議会(中医協)」だ。中医協は、診療報酬の改定など、医療費に関わる重要な決定を担っており、国民の健康を支える大きな役割を果たしている。そのメンバーは、医療関係者7名と支払基金(保険者)側7名での構成はご承知の通りだ。しかし、ここに患者の視点を直接反映出来る「患者代表」がいない。厚生労働省が言う「患者満足度の高い医療の提供」を目差すのであれば、患者の代表がいないことは理解に苦しむ。昨今、患者やその家族の声を反映させる為にも、患者代表をメンバーに加えるべきだと言う声が高まっている。当然の事だろう。本稿では、患者代表を加える意義とその必要性について論じたい。

  1. 患者の視点が反映されることで医療の質が向上する

医療は患者の健康や生活の質を支えるものであり、患者の視点は必須だ。医療関係者や支払基金側の意見だけでは、医療の現場で実際に治療やケアを受ける患者の生活感覚や満足度が十分に反映されるとは思えない。患者代表が中医協に加わる事で、より多様な視点から医療の質を評価・改善することが可能になり、医療サービスが真に国民にとって有益なものとなる。例えば、診療報酬の改定は医療の質に直接的な影響を与えるが、医療関係者と支払基金側だけとなれば、医療費の削減や経済的効率性が優先され、患者満足度の高い医療の提供が阻害される恐れがあり、患者代表が加入する事が待たれる。

  1. 医療サービスに対する信頼性の向上

中医協の決定に国民の理解を求めるのであれば、患者代表の参加はより重要と考える。何故ならば、国民が、中医協が決定する診療報酬の配分や医療費に関する政策が透明且つ公正であると感じられる事が医療保険制度の持続のためにも大切であるからだ。同時に患者の声が意思決定に反映されるとことで安心感も生まれる。医療は誰もが一度は関わるからこそ、広範な視点からの意見交換と情報共有が信頼構築に繋がると考える。

  1. 他の先進国の成功事例

他の先進国では既に患者代表を意思決定の場に加える取り組みが進んでいる。例えば、英国の国民保健サービス(NHS)は、患者の声を反映する仕組みを早くから取り入れ、医療政策に患者視点を取り入れ、国民から信頼性の高い医療制度を構築している。アメリカのメディケアも、患者や家族の声を反映させる専門委員会を設置し、政策の一貫性と公正性を確保している。これらの成功事例は、患者代表の参加が医療政策に多大な影響を与え、最終的に患者中心の医療の実現に貢献している事を示す。医療は専門家だけで行うと過ちが生ずると考える欧米を素直に見習い、中医協も患者代表を取り入れるべきだ。

  1. 患者代表導入に向けた課題とその解決策

しかしながら、患者代表の導入には、課題がある事も事実だ。過去に囚われた専門家は、専門知識を持たない患者代表が議論に加わる価値を認めようとしたがらない。しかし、時は流れ、今では患者満足度の高い医療の提供者が高く評価される時代だ。患者代表には、医療や制度に関する基礎的な研修を実施し、発言の際には専門家からのサポートを受けられるような体制を整える事で、効果的な議論が可能になる事は間違いない。

また、患者代表を選出する方法についても公平性を確保する為に、全国的な患者団体や公募を通じて適任者を選ぶ方法も議論が必要だ。患者代表として適切な人物を選出し、彼らが適切に意見を表明できる仕組みを整える事が、患者代表導入を成功させるための鍵となると考える。

結論

中医協に患者代表を加える事は、医療の質向上、医療制度に対する信頼性の向上、他国の成功事例の活用といった面で大きな意義があると考える。患者の声が届く医療政策が実現されれば、日本の医療制度は更に国民に寄り添う形で発展していく事が期待され、中医協の意思決定に患者代表が加わる事で、真に患者中心の患者の視点を反映した、厚生労働省が目指す「患者満足度の高い医療の提供」が実現するに違いない。


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