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未来の会

第2回 保険診療のルール 〜安全で良質な医療の提供を目指して〜

第2回 保険診療のルール 〜安全で良質な医療の提供を目指して〜

第2回 B000 特定疾患療養管理料

我が国の保険診療は、様々なルール(健康保険法等、健康保険法施行令等〈政令〉、療養担当規則〈省令〉、診療報酬点数表〈告示〉、通知等)により司られています。これらのルールは、医療者に対し「安全で良質な医療の提供」を求めており、同時に実施された行為の算定に於いて様々な要件を定めています。しかし、保険医が必ずしもルールを正確に理解せず、誤った算定が行われている実態が有ります。本企画は、保険診療の正しい解釈をお伝えし、良質な医療の提供と共に、保険医療機関の収益増大の一助となる事を期待しています。

 第2回は「B000 特定疾患療養管理料(225点、147点、87点)」を取り上げます。

 特定疾患療養管理料は、診療所、及び、中小病院(200床未満)の外来医療に於いて、外来管理加算と共に最も馴染みの有る診療報酬ではないでしょうか。実際、再診回数に占めるその算定割合は、内科67.4%、外科44.6%、小児科36.2%(社会医療診療行為別統計2022年6月審査分)と、内科系医療機関の約3分の2がその算定を行っています。

 特定疾患療養管理料は、医師の診察行為(問診、身体診察等)を評価したドクターフィーと言えるものであり、その証しとして管理内容の要点を診療録に記載する事を要件としています。患者の立場からすれば、主病に対し適切な診療に基づき指導・管理の行われる事が、医師に最も求める点で有り、ひいては信頼に繋がります。

 「令和6年 保医発0305第4号」に示されるその内容(留意事項等)として、目を通しておくべき重要項目を以下に示します。

(1)特定疾患療養管理料は、別に厚生労働大臣が定める疾患(以下、この項において「特定疾患」という。)(表1)を主病とする患者について、プライマリケア機能を担う地域のかかりつけ医師が計画的に療養上の管理を行うことを評価したものであり、許可病床数が200床以上の病院においては算定できない。

(2)特定疾患療養管理料は、特定疾患を主病とする患者に対して、治療計画に基づき、服薬、運動、栄養等の療養上の管理を行った場合に、月2回に限り算定する。

(3)第1回目の特定疾患療養管理料は、「A000」初診料(「注5」のただし書に規定する所定点数を算定する場合を含む。特に規定する場合を除き、以下この部において同じ。)を算定した初診の日又は当該保険医療機関から退院した日からそれぞれ起算して1カ月を経過した日以降に算定する。(後略)

(5)診察に基づき計画的な診療計画を立てている場合であって、必要やむを得ない場合に、看護に当たっている家族等を通して療養上の管理を行ったときにおいても、特定疾患療養管理料を算定できる。

(6)管理内容の要点を診療録に記載する。

(8)特定疾患療養管理料は、特定疾患を主病とする者に対し、実際に主病を中心とした療養上必要な管理が行われていない場合又は実態的に主病に対する治療が当該保険医療機関では行われていない場合には算定できない。

(9)主病とは、当該患者の全身的な医学管理の中心となっている特定疾患をいうものであり、対診又は依頼により検査のみを行っている保険医療機関にあっては算定できない。

(12)「注5」に規定する情報通信機器を用いた医学管理については、オンライン指針に沿って診療を行った場合に算定する。

 

(表1)特定疾患療養管理料に規定する疾患※「別表第一 特定疾患療養管理料並びに処方料及び処方箋料の特定疾患処方管理加算に規定する疾患」 (最終改正;令6.3.5 厚生労働省告示第59号)より再作成

結核、悪性新生物、甲状腺障害、処置後甲状腺機能低下症、スフィンゴリピド代謝障害及びその他の脂質蓄積障害、ムコ脂質症、リポ蛋白代謝障害及びその他の脂(質)血症(家族性高コレステロール血症等の遺伝性疾患に限る。)、リポジストロフィー、ローノア・ベンソード腺脂肪腫症、虚血性心疾患、不整脈、心不全、脳血管疾患、一過性脳虚血発作及び関連症候群、単純性慢性気管支炎及び粘液膿性慢性気管支炎、詳細不明の慢性気管支炎、その他の慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、喘息、喘息発作重責状態、気管支拡張症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎及び十二指腸炎、肝疾患(経過が慢性なものに限る。)、慢性ウイルス肝炎、アルコール性慢性膵炎、その他の慢性膵炎、思春期早発症、性染色体異常、アナフィラキシー、ギラン・バレー症候群

 

 上記の(表1)をご覧下さい。令和6年の改定で、対象疾患に「アナフィラキシー」と「ギラン・バレー症候群」が追加される一方、算定頻度の高い生活習慣病の「糖尿病」、「脂質異常症」、「高血圧」の3疾患が除かれました。

 この改定を受けて、医療機関側から様々な意見が出ています。特に、これら3疾患に対する全身管理を行う上で、特定疾患療養管理料から「B001-3生活習慣病管理料(Ⅰ)」或いは「B001-3-3生活習慣病管理料(Ⅱ)(令和6年新設)」へ移行させる事に批判が有ります。例えば、全国保険医団体連合会が、以下の様に主張しています。

 「現状では3疾患の治療でほとんどが特定疾患療養管理料(特定疾患処方管理加算)を算定しています。算定回数で見ると、生活習慣病管理料を1とすると特定疾患療養管理料は57倍と圧倒的な差があります。(生活習慣病管理料の算定回数は約20.3万回、特定疾患療養管理料の算定回数は約1165.5万回 中医協総会資料、2023年11月10日)(中略)57分の1の算定実績しかない点数を持ち出し、3疾患の医学的管理のために多くの医療機関が算定している特定疾患療養管理料を事実上廃止することは、診療所、中小病院の外来医療や医院経営に多大な混乱・影響をもたらします」

 しかし、従来3疾患に対する全身管理を行う上で、特定疾患療養管理料の算定が医師の裁量権という幅の元、その運用実態は曖昧であったと言わざるをえません(「Dr.の保険診療うっかりCheck」を参照)。より厳密な管理を算定要件とする生活習慣病管理料(Ⅰ)あるいは(Ⅱ)に切り替えられる事は、患者のメリットは多く、医療機関の経営面からのみ今回の改定を批判する事は、患者の視点が欠けています。

 今回新たに設けられた生活習慣病管理料(Ⅱ)の333点は、従来の月1回診療所で投薬を受け通院した場合の報酬総和(特定疾患管理料(225点)+外来管理加算(52点)+特定疾患処方管理加算2(56点))と同点であり、検査、注射、病理診断は包括範囲外として別個に算定出来ます。又、「オンライン診療による管理(290点)」でも算定可能となっています。一方、生活習慣病管理料(Ⅰ)は、従来の生活習慣病管理料から40点アップ(脂質異常症610点、高血圧660点、糖尿病760点)し、検査、注射、病理診断は包括されます。

 今回の改定は、診療所や中小病院の外来医療や医院経営に多大な混乱・影響を与えるものではなく、むしろ医師及び保険医療機関の診療報酬算定のバリエーションを増したと言えるのではないでしょうか。

Dr.の保険診療 うっかりCheck

外来管理加算(52点)と特定疾患療養管理料を併せて算定する場合の取り扱い

 特定疾患療養管理料は、特掲診療料に含まれる医学管理料ですが、そもそも特掲診療料とは、その性格と内容として特殊な診療行為についての費用です。つまり基本診療料として一括で支払う事が妥当でない“特別な診療行為”に対して、個別的な評価をなし、個々に点数を設定し、それらの診療行為を行った場合は、個々にそれらの費用を算定する事としています。その際、基本診療料と特掲診療料とを併せて算定する事が出来る一方、両者の診療行為の違いを明確に示す必要が有ります。

 外来管理加算と特定疾患療養管理料を併せて算定する場合には、それらの診療行為の違いの要点を診療録の記載により示す事が求められますので、常に気を配って下さい。

 

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