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未来の会

252 山口大学医学部附属病院(山口県宇部市)

252 山口大学医学部附属病院(山口県宇部市)

口大学医学部は、1944年に前身である県立医学専門学校として設置され、67年に国立に移管。この間80年に亘り医学教育と研究の中心を担い、質の高い医療の提供と医学の発展に貢献して来た。共に歴史を刻む附属病院は、地域医療の司令塔としての役割を果たしている。

明治維新の原動力となった志士らを育てた幕末の思想家、吉田松陰を生んだ土地柄だけに、これ迄も数多くの先進的な取り組みを全国に先駆けて取り組んで来た。例えば、国立大学病院で最初に設置認可された「高度救命救急センター」を中心とした高度救急医療体制の構築やAIの医学応用を推進する「AIシステム医学・医療研究教育センター(AISMEC)」の設立等がそうだ。

2015年から病院の再開発整備事業が始まり、現存も既存の診療棟の改修が行われているが、いよいよ事業の完了が間近に迫っている。新病棟(A棟)の建設に当たっては、患者の不安を少しでも和らげようとホスピタルアートの導入を計画した。そこで、同大学教育学部出身で、アートディレクターとして活躍する渡邉良重氏に作品の制作を依頼。グラフィックデザインを中心に作品を手掛ける渡邉氏だが、ホスピタルアートは初めての経験だったという。

渡邉氏は、自分と同じ山口県周南市出身の詩人で、「ぞうさん」等で知られるまど・みちおの作品をモチーフに選び制作を開始。まどの詩、「空気」の世界観を描いた渡邉氏の原画を基に、モザイクアーティストでイタリア在住の永井友紀子氏が、イタリア産の大理石やベネチアンガラスを使って大作を作り上げ、18年、A棟の1階エントランスに縦2.4m、横4.35mの巨大なモザイクアートが完成した。

23年から24年に掛けては、新たに竣工した棟・C棟にも新たなアートワークが設置された。作品を貫くキーワードは「再生」。再開発整備事業である事、病院が命を守る場である事から生まれたコンセプトだ。地域との連携も強く意識し、人々が行き交う棟のエレベーターホールには、山口県出身の詩人・金子みすゞの詩をテーマに、県に縁のあるアーティストら8名の手による作品を設置した。又、C棟1Fに位置し、病棟間を繋ぐ空間「クロスラウンジ」では、山口情報芸術センター[YCAM]とアーティストが協働して制作したデジタルアートが空間に彩りを添えている。

18年に完成したA棟は「KIBIRU TOWER」と名付けられた。「きびる」とは山口県の方言で、「結び」という意味を持つ 。その名の通り、連携する多くの病棟の主要機能を集約し、病院全体を結ぶ中心的存在の役割を表現しているが、同時にこの再開発整備事業が患者や地域を医療に結び付けるという思いも込められている。これからも地域医療の「安心」と「未来」を育てる病院として、質の高い医療を提供し続けて行く。

設計:佐藤総合計画・テクノ工営設計共同体
建築・施工:清水建設株式会社
252_山口大学医学部附属病院(山口県宇部市)

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