SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

第82回 厚労省人事ウォッチング
伊原事務次官誕生も無難な今夏の幹部人事

第82回 厚労省人事ウォッチング伊原事務次官誕生も無難な今夏の幹部人事
伊原和人氏

 厚生労働省の幹部人事が7月5日付で発令された。1年前に本欄で予想した通り、順当に伊原和人氏が保険局長から事務次官に昇格した。年末に公的年金制度の改革案をまとめなければならない年金局長人事に注目が集まったが、間隆一郎氏に白羽の矢が立てられた。今回の人事の注目点を取り上げたい。

 1987年に旧厚生省に入省した伊原氏は前任の大島一博氏と同期だ。医政局長や政策統括官、保険局長と重要な局長ポストを歴任し、満を持して事務次官に。子ども・子育て支援制度発足に伴う社会保障制度改革の舵取り役になるとみられる。就任の挨拶で「2030年、40年、50年に向けて社会保障の仕事を次の世代へバトンタッチ出来る様にして行きたい」と意気込んだ。

 年金局長は間氏に落ち着いた。財政検証も公表され、概ね公的年金制度の改革の絵姿は出揃ったが、今後の法案審議で野党からの総攻撃は必至だ。その時に備え、説明能力の高い間氏が起用されたとみられる。年金課長を歴任した間氏は2年前の幹部人事でも年金局長に起用する案が取り沙汰されたが、漸く実現した形となった。

 保険局長には間氏と同期入省の鹿沼均氏(90年、旧厚生省)が就任した。政策統括官からの横滑りで順当な人事だ。間氏が一歩リードしているものの、将来の事務次官候補に名乗りを上げた。社会保障制度改革の中でも医療保険制度の見直しはいの一番で求められる為、今後その手腕が問われる事になる。

 次代を担う熊木正人氏(93年、旧厚生省)はこども家庭庁支援金制度等準備室長から大臣官房審議官(総合政策担当、政策統括室長代理)の重要ポストで厚労省に戻った。政策統括官に就任した朝川知昭氏(90年、同)を支える。

 医系技官では、事務次官級の医務技監である迫井正深氏(92年、旧厚生省)が留任。一部で「消費者庁長官に就任するのでは」との憶測が広がった大坪寛子氏(08年、厚生労働省)も健康・生活衛生局長から動かなかった。大坪氏と同期扱いで、女性として初めての保険局医療課長に就いた森光敬子氏(92年、旧厚生省)は医政局長に。両氏による出世レースは今後激しさを増しそうだ。医政局長だった浅沼一成氏(91年、同)は国立保健医療科学院次長に転じる。

 一方で、薬系技官トップは交代した。医薬担当の大臣官房審議官、吉田易範氏(90年、旧厚生省入省)は僅か1年で交代し、佐藤大作氏(92年、同)が監視指導・麻薬対策課長から昇進した。

 労働官僚のトップは交代せず、全体的に滞留気味だ。事務次官級である厚生労働審議官の田中誠二氏(87年、旧労働省)に加え、官房長の村山誠氏(90年、同)も留任した。村山氏が就任すると見込まれた労働基準局長には、同期の岸本武史氏が人材開発統括官から異動。官房長は大臣を支える重要なポジションだが、武見敬三・厚労相が留任を望んだという。

 今後の焦点は、来年以降の事務次官人事の行方だ。伊原氏が留任するのか、それとも間、鹿沼、村山3氏が揃う90年入省組に一気に回すのか。はたまた、こども家庭庁長官の渡辺由美子氏(88年、旧厚生省)が戻る選択肢が未だ残されているのか。時の政権や厚労大臣の判断等にも左右され兼ねず、昨年夏とは一転して現時点では予断が許さない状況だ。

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

Return Top