目撃は「精神異常」の証ではない
「頭のおかしな人」という負のラベリングは、変化を嫌う人々にとって、とても使い勝手がいい。目障りな人々を“健全〟なコミュニティから容易に排除できるからだ。もちろん、そのようなレッテル貼りがはびこる社会は危険である。日本のような平和ボケ共同体はその典型であり、正常性バイアスによって変化の兆候から目を逸らし続けると、いずれ痛い目をみることになる。
2024年6月、超党派の国会議員による「安全保障から考える未確認異常現象解明議員連盟」(UFO議連)が設立された。UFOやUAP(未確認異常現象)を解明する専門機関づくりを国に働きかける組織で、元防衛大臣の浜田靖一さん(自民党)が代表を務め、石破茂さん(同)、中谷元さん(同)、小泉進次郎さん(同)、原口一博さん(立憲民主党)、前原誠司さん(教育無償化を実現する会)ら80人を超える議員が名を連ねた。
設立のきっかけを作ったのは浅川義治さん(日本維新の会)。代議士としては1期目ながら、日本でも空中や海中で目撃が相次ぐUAPについての質問を安全保障委員会で行い、「UFO議員」として注目された。子どもの頃、実際にUFOを見たことがあるという浅川さんは語る。
「最初は党からも『変な質問をしないでくれ』と止められる状況でした。でも、他国の兵器かもしれないものがあちこちの空を飛んでいるのですから、目撃証言を鼻で笑っている場合ではありません。危険性の有無や実態をきちんと調べるのが科学的な態度です。特に政治家は、想定外を想定するのが役目だと私は考えているので、バカにされるのは分かっていましたが、機会をみてUAP関連の質問を行いました」
米国では近年、UAPに関する公聴会が開催され、米国防総省は23年、機密解除されたUAP情報を集めたウェブサイトを立ち上げた。すると軍関係者から目撃情報が次々と寄せられるようになった。それまでは、うかつに証言するとメンタルヘルスの異常を疑われる恐れがあったが、安心して話せる状況になったことで、情報の量と質が飛躍的に高まったという。
浅川さんは、このような米国の動きも党内や他党の議員に伝え、理解者を増やしていった。「人々の恐怖を煽り、軍事費増強につなげようとしているのではないか」といった懸念の声も聞かれるが、浅川さんは「現状では軍事的な脅威なのかどうかも分からないので、対策のしようがありません。米国と連携を図りながら、我が国のUAPに関する情報収集、分析、識別能力を向上させる組織づくりを目指しています」としている。
もう40年近く前になるが、JALの貨物機がアラスカ上空でUFOと遭遇した。この機の機長の証言は当時、様々なメディアで大きく取り上げられたが、間もなく火消し役のマスコミが現れて「惑星の見間違え」と決めつけ、機長は地上勤務に異動させられた。ところがその後、米国のレーダーでもこのUFOを捉えていたことが分かり、これらの情報をCIAが隠蔽したことが曝露された。メンタルヘルス不調者のように扱われた機長の方が、実は正常だったのだ。これに関連して医師に言いたいのだが、理解し難い不調を訴える患者と出会った時、すぐに「精神疾患」と決めつけることは慎んでいただきたい。精神科を診断のゴミ箱にしていると、医学の進歩が妨げられる。
ジャーナリスト:佐藤 光展
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