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未来の会

251 埼玉慈恵病院 埼玉手外科マイクロサージャリー研究所(埼玉県熊谷市)

251 埼玉慈恵病院 埼玉手外科マイクロサージャリー研究所(埼玉県熊谷市)

手の温もりと癒やしをアートに託す
251 埼玉慈恵病院 埼玉手外科マイクロサージャリー研究所(埼玉県熊谷市)

西田医院として1903(明治36)年に開設して以来、120年以上に亘り地域の医療を見守り続けている埼玉慈恵病院は、患者、職員、地域社会への貢献を病院の理念に掲げている。

院内のデザインは「無機質になりがちな病院に、温かさや柔らかさを取り入れ、患者や家族の緊張や不安を和らげたい」という久保寿朗病院長の思いを反映し、「丸み」を感じられる様工夫した。待合室の天井には円を描き、間接照明が柔らかな印象を与えている。又、明るく清潔感のある白と「慈恵ブルー」、温かみの有る木や布等の素材をふんだんに使い、大きな病院にありがちな硬い印象にならない様に配慮している。スタッフの笑顔や朗らかな挨拶も院内の雰囲気を明るくしているが、これは西田貞之前理事長の熱意によって導入された、職員の成長と幸せを目指して行っている「幸せ研修」の効果だろう。院内には「Positive Room」「Win-Win Room」「Happiness Hall」と名付けられた研修室が設けられ、職種を越えた学びの場となっている。

そうした同院がホスピタルアートを導入したのは、2019年の「埼玉手外科マイクロサージャリー研究所」の開設が切っ掛けだった。同研究所は、手を中心に肘関節迄の上肢の外傷を専門に診療しており、新しい治療法の研究や専門医の育成、海外留学生の受け入れにも取り組んでいる。年間1000件を超える手術を行い、全国でもトップクラスの診療実績を誇る同研究所には、県内外から多くの患者が集まる。この研究所に外来診察室や検査室、手術室、トレーニング室等を備えた手外科専用のフロアを設ける為4号館の建設を計画したところ、ホスピタルアーティストの村岡ケンイチ氏から「診察室に壁画を描いてはどうか」との提案を受け、所長の福本恵三医師も「安心して診察を受けられる様な、優しく、楽しい空間にしたい」と賛同。アートのテーマは「つながりの部屋」とし、村岡氏や福本所長らが一緒に構想を練った。柔らかなタッチの手のひらをモチーフにした背景に、福本所長をイメージした「てげかくん」が、「手」の形の気球に乗って世界中を旅しながら各地で治療をする姿に、「手外科」を広く知って欲しい、という福本医師の思いが込められている。

手外科待合ホールには「手」にまつわる絵画やポスター、オブジェ等を展示。施設内に溢れる温かみの有るアートは患者から好評で、職員からも「手外科の診察室で仕事をすると癒やされる」という声が上がる程だ。又、病院の本館1階の待合室ギャラリーでは、地元の小学校の児童による絵画や書道の作品を展示し、地域とのコミュニケーションの場ともなっている。

「質の高い医療」「安心・安全な医療」に加え、「ぬくもりのある医療」を掲げて100年以上の時を刻んで来た病院は、この先も地域の医療を温かく包み込んで行く。

4号館設計:田口航平建築設計事務所、同建築・施工:㈱岡部工務店、㈱東電工業社、富士メンテナンス㈱

251_埼玉慈恵病院

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