共働き世帯が増える中、2025年の年金制度改革の課題の1つに「第3号被保険者制度」の見直しが浮上している。勤め人の配偶者から扶養を受けていれば保険料を納めなくとも老後に基礎年金を受け取れる仕組みで、働く女性らからは「不公平だ」と撤廃を求める声も強い。それでも厚生労働省は、廃止は視野に入れておらず制度の縮小で対応する意向だ。
「第3号制度」の対象は、専業主婦(主夫)や年収130万円未満のパート従業員らを中心に約700万人いる。同制度は「主婦年金」等とも言われるが、働く女性は勿論、自営業者の妻なら収入が無くとも保険料を払う必要が有り、公平性の観点から問題視されている。又、第3号に留まる為に労働時間を抑える人も多く「女性の社会進出を妨げている」との指摘が絶えない。この為年金制度改革の度に見直しを求める声が上がって来た。
第3号制度は1986年、基礎年金制度の発足と同時に導入された。それ迄は専業主婦の公的年金への加入は任意だった。未加入の人が離婚すれば老後に無年金になる問題が有り、「国民皆年金」によってその解消を目指した。
だが、ピークの95年度には1220万人だった第3号も2022年度末時点では721万人にまで減っている。共働き世帯の増加や、パート等への厚生年金の適用拡大に伴って、厚生年金に加入し保険料を払う人が増えて来たのが大きな原因だ。
男女共同参画白書によると、1985年の共働き世帯は718万世帯。これに対し、専業主婦世帯は936万世帯だった。それが2022年は共働きが1191万世帯に増える一方、専業主婦は430万世帯に迄減っている。
厚労省はこれ迄、公的年金の支給水準を示す「モデル年金」について、「サラリーマンの夫と専業主婦の妻」で表して来た。夫とその扶養を受ける第3号の妻という夫婦像だ。お父さんが収入を得る為に働き、お母さんが家事をして家庭を支えるというひと昔前の生活スタイルに合わせたものとなっている。
しかし、今後は多様な世帯モデルを示す方向で検討している。過去のデータとの整合性等を盾に長らく現行モデルに固執して来た厚労省だが、実態とのズレやジェンダー平等論の高まりを無視出来なくなった。ただ、同省幹部は「だからと言って3号を廃止するというのは別問題だ」と話す。
厚労省が廃止に慎重なのは、減ったとは言え721万人いる第3号の人から保険料を新たに徴収するのは極めて困難と捉えているからだ。保険料免除や未納で老後低年金、無年金に陥る人が増え兼ねない事を懸念している。
次期年金制度改革の議論をしている厚労相の諮問機関、社会保障審議会年金部会も第3号制度の廃止には傾いていない。年金の適用拡大を進め、厚生年金に加入し易くする事で結果的に対象者を減らして行くべきだという第3号制度の縮小論が大勢だ。5月13日の同部会でもそうした意見が相次ぎ、大和総研の是枝俊悟・金融調査部主任研究員は、厚生年金の適用拡大を進め、結果的に最後に残った層を見極めた上で第3号制度の在り方を検討すべきだ、との見解を示した。
厚労省幹部は第3号制度の問題について、「公平性の観点からこれからも燻り続けて行くだろう」と認めた上で、「病弱の人、育児や介護に掛かり切りの人、働きたくとも働けない人達は一定数いる。皆年金の理念を掲げる以上、こうした人を年金制度の枠外に置く事は出来ない」と話す。
LEAVE A REPLY