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未来の会

第194回 厚労省ウォッチング
難航必至の年金改革 負担増の恐れも

第194回 厚労省ウォッチング難航必至の年金改革  負担増の恐れも

2025年の年金制度改革に向け、厚生労働省の審議会等で具体的な議論がスタートした。主要テーマの1つは「老後の所得格差縮小」で、満額でも月約6万8000円の国民年金(基礎年金)の底上げ策が軸となる。同省は4月、国民年金の加入期間(20〜60歳になる迄)を「65歳になる迄」へ5年延ばす「効果」等を試算し、公表すると表明したが、年金局内からは「何れもハードルは高い」(幹部)との懸念が漏れる。

公的年金は定額の国民年金の上に報酬比例部分が乗る2階建て。少子高齢化に対応し給付を抑えて年金財政を安定させる政策により、モデル世帯の年金給付水準(現役世代の平均的手取りに対する年金額の割合)は19年度の61・7%から47年度には50・8%と2割程目減りすると見込まれている。

国民年金部分は更に厳しく、36・4%から26・2%へ下がる3割減と試算されている。報酬比例部分が有るのは正規雇用された人が中心で、非正規雇用者、自営業者、無職業者は国民年金のみとなる。給付拡充は避けられない課題だ。

国民年金の充実は、中低所得で報酬比例部分が有る人への恩恵も大きい。報酬比例部分が少ない分、全体に占める国民年金の割合が高く、財源の半分が税金の国民年金を底上げすれば、少ない保険料でより厚い年金を受給出来るからだ。同省が19年に示した試算では、5年延長によってモデル世帯の給付水準は50・8%から57・6%へと6・8ポイントアップするとしていた。

ただ、国民の理解を得ているとは言い難い。4月16日に厚労省が5年延長案を審議会の議題に乗せるや、ネット上には「契約違反だ」「詐欺国家か」といった書き込みで溢れ、ほぼ批判一色に染まった。

国民年金の24年度の保険料は、前年度比で月額460円増の1万6980円になったばかり。25年度は更に530円増と2年連続のアップが確定している。ただでさえ月に1万7510円の負担となるのに、加入期間が5年延びれば総額で約105万円の負担増となる計算だ。

国会では、医療保険料に上乗せして徴収する「子育て支援金」に対する野党の攻撃が激しさを増している最中でもある。支援金の拠出で保険料が月1000円増となる人も少なくない中、厚労省幹部は「国民年金の給付充実に直結する事が中々伝わらない。タイミングが悪かったかな」と愚痴をこぼす。

また、2分の1の国庫負担が付く国民年金は、給付を増やせば税金投入額も増す。財務省の強い抵抗は必至だ。将来的には1兆円を超す税財源を要し、恒久制度とするには増税が避けられず、一層ハードルは上がる。当面、延長期間5年分の給付財源は保険料のみとし、国庫負担は付けない案も模索されているものの、それでは高所得層から中低所得層への所得再分配機能が弱まり、「格差縮小」効果が小さくなるジレンマを抱える。

国民年金加入期間を5年延長する案の他にも厚労省は、▽給料の高い人の厚生年金保険料を増やす▽働いて給料を得ている高齢者の年金減額を緩和したり止めたりする▽厚生年金の更なる適用拡大▽厚生年金の保険料を使って国民年金の給付を底上げする——についても、それぞれ制度改革の選択肢として効果を試算する、とした。5年に1度の「年金財政検証」の結果として、今夏にも公表する予定だ。

とは言え、負担増に繋がるものも多い上、働く高齢者の年金減額を緩和すれば給付額が大幅に増え、年金財政を損なう恐れも有る。前回の制度改革では見送られた。厚労省年金局の悩みは深い。

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