母子の心を癒やすマスキングテープアート
246 愛染橋病院 (大阪府大阪市)
日本最初の孤児院を岡山県に設立し、社会福祉事業の先駆者と言われる石井十次の遺志を継ぐ社会福祉法人石井記念愛染園附属愛染橋病院は、1937(昭和12)年に設立された。以来、石井が掲げた「隣人愛」の精神に基づき、人間味溢れる温かな全人医療の提供と、地域医療への貢献を使命としている。
岡山に続き大阪で保育所や夜学校を設立し、社会福祉事業に取り組んでいた石井は、貧しい母と子の為の病院設立を思い描きながら、48歳の若さで亡くなった。その思いは支援者の尽力で実現され、開院当初から一貫して地域の母子医療の中心となる事を目指して来た。現在は総合周産期センターとしての役割を果たすべく、母体胎児集中治療室や新生児集中治療室、回復治療室を備え、緊急時には365日24時間体制で妊産婦を受け入れている。早産には産科医の他、小児科医も複数名で対応し、新しい命を全力で守っている。又、地域医療連携も病院の大きな柱で、地域の医療機関と連携しながら、地域の人々に信頼され、頼りにされる病院を目指している。
そんな愛染橋病院が、ホスピタルアート活動の一環としてマスキングテープを使ったアートに取り組み始めたのは、3年前。それ迄も廊下等でアート作品の展示は行っていたが、一度展示すると何年も同じ状態である事も稀ではなく、患者や職員に対する癒やしとして機能しているとは限らなかった。アートを展示する目的が、病院に来る人々の気持ちを和らげる事であるならば、もっと流動的で活動的な、患者や家族、職員も参加出来るものの方が、その効果も高まるのではないかとの思いから始まったのが、マスキングテープを使った参加型のアートだった。
マスキングテープとは元々、車や建築物の塗装の際に使われる保護用の粘着テープだ。ところが最近はインテリア用、ラッピング用として人気を集め、作品に取り入れる芸術家も増えている。
病院では3階の小児外来の壁にスペースを用意。「花火」「ひまわり」等、季節に合わせてテーマを決め、職員が作った型紙に合わせて患者や家族にマスキングテープを自由に貼って貰い、作品を作り上げて行く。勿論、作品作りの中心は子供達で、テープを切れない小さな子供には職員らが制作したシールを渡す等して、制作に参加して貰っている。
2023年10月にはNPO法人コミュナールが主催したホスピタルアートのプロジェクト「ひびきあうハートTokyo 2023」に参加した。全国からマスキングテープで作ったハート型のパーツを募り、東京・広尾の日本赤十字社医療センターで大きな1つのハートを作るという試みで、外来で訪れた子供達の他、入院患者や病院スタッフらも作品作りに取り組んだ。こうしたマスキングテープアートの取り組みが定着するにつれ、アートへの参加を楽しむ子供達も増え、病棟にはいつも子供の笑顔が有る。母と子の幸せを願った石井の理念は今も受け継がれ、息づいている。
246愛染橋病院 (大阪府大阪市)
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