「コロナ後遺症」に代替医療 泉大津市の施策に波紋
大阪府泉大津市が、新型コロナ感染症の後遺症やワクチン接種後の不調に悩む市民に向けて紹介している「オンライン相談」事業が波紋を広げている。
同市のサイト等によると、相談には医師7〜9人が対応し、市民は2回まで無料。医療行為ではなくあくまで健康相談と断った上で、運営は外部の業者が行っている。
波紋を呼んでいるのは、対応する医師の〝治療内容〟だ。同事業を説明するサイトには「漢方等の伝統医学、その他栄養療法や養生・ライフケアなど統合医療の専門医師がご相談をお受けします」と有り、9人の医師が動画でメッセージを寄せている。
「実際に相談に乗っている現場を見た訳ではないので判断は難しいが、経歴を見ると西洋医学やワクチンを忌避する傾向の人が多い。中には、エセ医学として知られるホメオパシーを取り入れていると明言する医師もいる。そもそも泉大津市の事業なのに、対応に当たる医師は東京など遠方の医療機関の人が多い。税金を使って何故泉大津市がこれをやらなければいけないのか疑問だ」(在阪の全国紙記者)。
案の定、この事業はX(旧ツイッター)で問題視された。同市はコロナやワクチン関連の不調に悩む市民に向けて同じ外部業者が運営する「新型コロナ後遺症改善プログラム」も無料で実施しているが、その内容も「ヨーガ呼吸法、整体コンディショニング、高濃度水素吸入、栄養指導など、自己治癒力を高めるためのプログラム」(市HPから)と、行政の事業としてはかなり尖った内容だ。
泉大津市の南出賢一・市長は、新型コロナのワクチンについて、自身のXで「過去最大の薬害といわれる接種後の死亡や健康被害報告。体調不良相談もあとを絶たない」と投稿したり、市のワクチン接種事業でも「免疫機能の低下等、追加接種による人体への影響についても心配されています。(中略)極めて慎重に判断してください」等とわざわざメッセージを寄せたりする反ワクチンで知られる人物。「今回の事業も、南出市長のお手盛り感が強い」と前出の記者は話す。
無料相談であっても、実際に治療を受けるとなれば決して安くはない治療費が掛かる。新型コロナの対応に当たる医師は「HPVワクチンでも従来の医療が対応出来ない不調に悩む人達の存在がクローズアップされた。そうした人をホメオパシー等の非科学的な手段に引きずり込むのは許せない」と憤る。「代替医療に傾倒する事によって、治療すべき疾患が見過ごされる恐れも有る。行政は慎重になって欲しい」との訴えは尤もだ。
熱傷の子供巡り応酬……被災地の医療の難しさ
能登半島地震で震度7を記録した石川県志賀町で、5歳の男児が火傷を負い、4日後に死亡した。受傷直後に救急車で運ばれた病院から入院を断られた事が報じられ、この医療機関の対応を「入院すべきだった」と批判した医師が、同じ医療従事者から猛批判を浴びる事態となっている。
複数の報道によると、男児は志賀町の親戚の家で被災。激しい揺れで石油ストーブの上のやかんの熱湯が掛かり、火傷を負った。救急車を呼び病院に搬送されたが、医師から「火傷は軽傷ではないが重傷でもない」と言われたという。治療を受けて親戚宅に戻り、4日に再び受診して診察を待っている間に容体が急変し死亡した。この報道に対して、熱傷学会専門医を名乗るXのアカウントが「私は同じ熱傷で、同じ状況で、ご両親が入院を希望するならば、100%入院管理で経過を見ます」と投稿。これに対して、医療従事者を名乗る複数のアカウントが「発災直後の被災地の医療機関が平常時と同じ対応ができない事は想像できる。他に医療を必要とする患者がどのくらいいたかトリアージの状況等もみなければ判断できない」「外野から批判するのは、現場を萎縮させるだけだ」と批判している。
病院側は対応が適切だったか検証中というが、遺族にも医療従事者にも傷が残る結果となった事は間違いない。
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