恐怖……あの「竹田くん」が法廷闘争へ
2023年1月からインターネットのブログで公開され、医療従事者らを震え上がらせた漫画『脳外科医 竹田くん』(ブログで連載中)を覚えているだろうか。架空の都市、赤池市の市民病院に赴任して来たプライドばかりで手術の腕が未熟な脳外科医の竹田くんが、数々の手術で失敗を重ねて行く様子と、それを容認した上司や病院の姿勢を痛烈に批判する内容で、本稿でも半年前に取り上げた。
この漫画が怖いのは、兵庫県の赤穂市民病院の脳神経外科で実際に19年から相次いで起きた医療過誤事件に酷似している事。「漫画はその後も連載が続いていて、竹田くんは既に病院を去っているが、市役所や学会からの要請に病院がまともに対応して来なかった様子が描かれている。これはこれで震えながら読んでいます」と関東地方の勤務医の男性。この医師が指摘する通り、漫画は、竹田くんが去った事で新たな医療過誤は起きず混乱も収まると思いきや、病院のスタッフが変わって行く中で竹田くんの起こした事故をまともに検証出来ない病院の呆れた対応に焦点を当てた内容で更新が続いている。
そして、この漫画に酷似した赤穂市民病院の医療過誤問題を追及して来た地元紙「赤穂民報」が11月25日、衝撃的なニュースを配信した。竹田くんのモデルとされる同病院脳神経外科に勤めていた40代の医師が、上司だった科長、前院長、赤穂市に損害賠償を求める訴訟を10月に神戸地裁姫路支部に起こしていた、というのだ。
記事によると、原告の医師は21年3月に血管内治療(カテーテル)の専門医資格を取ろうとしたが、科長が出願に必要な書面への署名を拒否した為受験資格を喪失したと訴えているという。他にも、20年7月に科長から暴行を受けて怪我をし、科長の配置転換を求めたが対策して貰えず、その為に鬱病になって退職を余儀無くされた等と主張している。
「このニュースには驚きました。赤穂市民病院や周辺に知り合いはおらず、私はただの漫画の一読者ですが、訴状に有ったという原告側の訴えが全て、漫画で『竹田くん』が周囲に訴えていた内容と同じだったからです」(前出の勤務医)。
確かに漫画には、竹田くんが専門医資格の取得を病院に邪魔されたと憤り、科長のパワハラを訴えると病院を脅していた事や、怪我を負った経緯等、訴状と同じ内容が描かれている。勿論、漫画が更新されたのは訴状が出されるずっと前である。兵庫県赤穂市といえば、忠臣蔵で有名な赤穂義士ゆかりの地。果たして〝竹田くん〟の仇討ちはこれから、どうなって行くのか……。
やはり訴訟になった…愛知の「コロナワクチン死」
法廷闘争、と言えばこちらは「やはりそうなったか」と耳目が一致する訴訟である。
愛知県愛西市の新型コロナワクチンの集団接種会場で2022年11月、接種直後に女性(当時42歳)が死亡した問題で、夫(46歳)らが同市に約4500万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴した。女性の死亡を巡っては、同市の医療事故調査委員会が「早期にアドレナリンを投与していれば、救命出来た可能性が否定出来ない」等とする調査結果を報告しており、原告側は医師がアドレナリンを投与しなかった事を問題視。市の集団接種会場で起きた事から、市に損害賠償責任が有るとした。
医療事故問題に詳しい関係者は「あの報告書が出れば早晩、こうなる事は分かっていた」と話す。「報告書は、患者がアナフィラキシーを起こした可能性が有るとして、アドレナリン筋注を迅速にしなかった事を標準的ではなかったと決め付け、患者にアナフィラキシー特有の症状が出ていない状況でも、それがアドレナリンを回避する理由にはならない、と責任追及をしてくれと言わんばかりの書き振りです」。そして事実、この報告書を根拠に民事訴訟が提起された。
今後、接種会場の医師や看護師を相手取り、遺族側が訴訟を起こす可能性も指摘されている。その際にもこの報告書は大きな威力を持ちそうである。
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