ついに学会が調査へ 線虫検査は鼻が利く?
「がん特有の臭い」を検知する線虫によって、尿を調べるだけで15種類のがんのリスクが分かると謳う世界初の線虫がん検査「N−NOSE」について、ついに学会が動き始めた。今年6月に開かれた日本がん検診・診断学会総会では、線虫がん検査で「リスクが高い」とされた患者が、詳しく調べる為に医療機関を訪れる事で、全国の医療機関で混乱が起きているとの指摘が上がり、その精度を疑問視する声が相次いだ。そこで、この検査の有効性を調べる為の全国調査を始めたのだ。
学会関係者によると、「N−NOSE」によって現場に起きている混乱は、主に「がんではないのに、線虫検査で高リスクとされた人が検査を繰り返す問題」と、逆に「本当はがんが有るのに、検査で低リスクとされた事で、がん検診を受けずに進行してしまう問題」だ。線虫がん検査自体は1万4000円前後と安いが、高リスクとされても何処のがんかは分からない。結局PET(陽電子放射断層撮影)検査等で詳しく調べると、保険診療外となる為10万円前後掛かってしまう。
神奈川県藤沢市が昨年11月、ふるさと納税の返礼品に線虫がん検査キットを加えて批判を浴びている事を今年3月に本欄でも紹介したが、手軽な検査方法や派手な宣伝効果も有り、検査を受ける人は後を絶たない様だ。
学会によると、調査は同学会やPET核医学分科会の有志らにより、PET検査を行う全国の医療機関を対象に行われる。線虫がん検査を切っ掛けにPET検査に来た患者の数や、実際にがんが見つかった人の人数、がんの種類等を報告して貰う。
そんな学会の動きをよそに、テレビCM等で「くんくん、ぼくらは鼻がきく〜」と派手に宣伝を続ける「N−NOSE」。検査を行っている「HIROTSUバイオサイエンス」(東京都千代田区)は、「PET検査では線虫検査の精度を検証する能力は無い」「アンケートは主観的な偏りが入り易い」等とコメントし、強気の姿勢を崩さない。都内の内科医は「保険診療で認められていない検査だけ行って、高リスクでも後は知らんぷりですからね。いい商売ですよ」と吐き捨てる。
果たして鼻が利くのは線虫か、それとも同社の商売っ気の方か。
「薄毛」治療のトラブルに注意
男性型脱毛症(AGA)等の薄毛治療を巡って、契約のトラブルが増えているという。治療は長期に亘り、費用も高額になりがちだが、契約の解除(クーリングオフ)が出来ない事が問題となっているのだ。どういう事か。
消費者問題に詳しい弁護士によると、契約から一定の期間内であれば契約を解除出来るクーリングオフ制度は、特定商取引法という法律によって定められている。自由診療である脱毛やしみ、そばかすの除去、しわやたるみの軽減等の一部の美容医療やエステは、サービスの提供が1カ月以上、代金が5万円以上という条件に当て嵌まれば、クーリングオフ出来る。しかし、薄毛治療は対象外なのだ。
「薄毛治療の多くは自由診療で、治療期間も長期に亘る。インターネット等で派手に広告している点も他の美容医療と似ていますが、法律の適用外なので注意が必要です」(前出の弁護士)。
案の定、消費者センターにも相談が入っている。東京都消費生活総合センターによると、AGAや育毛、薄毛治療、増毛等に関する相談は年々増えており、2020年は43件だったが、22年には倍以上の89件に増えた。最近は若者や女性からの相談も多いという。
「治療に当たっては説明をよく聞き、他のクリニックとも治療内容や料金を比較する事、その場で契約しない様にする事、契約書をよく読み納得してから契約する事が大事です」(同)。
脱毛は良くて薄毛治療はダメというのは今ひとつ理解に苦しむが、自由診療は本人が納得した上で治療を受けるのが鉄則。泣き寝入りしない為にも契約は慎重に!
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