今度は「熱中症」で露呈した大阪府の科学リテラシー
猛暑が続いた今年の夏、全国各地で熱中症になる人が相次ぎ、救急車の出動が一時難しくなる等、正に災害級の暑さと向き合う事となった。
「人々が外に出て活動する様になり、海外からの観光客も増え、人流が増した事で新型コロナも又第9波入りしたが、人々がマスク生活に戻る事は無かった。それが又感染を広げた側面は有ったと思います」(大阪の感染症医)
そんな中、熱中症予防を呼び掛ける自治体のポスターが物議を醸したのをご存じだろうか。「震源地は大阪府です。公民連携の試みとして、府は小林製薬や大塚製薬と連携して熱中症予防を啓発するポスターを作成、薬局等に貼って貰っているのですが、その内容があまりにあからさまなんです」(同)
ポスターは大阪府のサイトからも入手出来るが、例えば小林製薬の場合、ポスターの表には「熱中症はとにかく予防が大事なんやって」と書かれ、小林製薬の製品である『熱さまシート』を額に貼った「熱さま君」が大阪府の公式マスコットキャラクターである「もずやん」と熱中症予防を呼び掛ける会話をしている。裏面はもっと露骨で、下四分の一のスペースで「暑さ対策に! 熱さまシート」と商品の宣伝をしているのである。
「熱さまシートは発熱した時額に貼る用途で使われますが、熱中症対策としては無意味です。冷やすなら脇や足の付け根等といった大きな血管が有る場所が良い。シートで多少ひんやりして気持ち良いと思う事は有っても、体温を下げる効果は有りません」(同)。企業側もそれを分かった上で、「熱中症対策」ではなく「暑さ対策」と記載している当たり、確信犯と言えそうだが……。
大阪府と言えば、コロナ禍の2020年8月、吉村洋文知事が「嘘みたいな本当の話」として、市販のうがい薬が新型コロナウイルスに効果が有る様な発言をして話題となった。
「当時も大阪府の科学リテラシーは大丈夫かと言われたものだが、今回の問題も又SNSでプチ炎上している様だ。科学リテラシーは勿論、公的な自治体が一企業の商品の宣伝に加担して良いのかという指摘には、私もその通りだと思います」とこの医師は苦笑いしている。
薬不足を助長するのは「ダイエット薬」?
ジェネリックメーカーの不祥事に端を発する薬不足に加え、コロナ禍明けの急速な様々な感染症拡大により、解熱剤や咳止めといった薬を中心に品不足が続いている。そんな中、血糖値を下げる働きが有り糖尿病の治療に使われる「GLP‒1受容体作動薬」の品不足を巡り、「自由診療クリニックで、ダイエット目的での処方が多い為ではないか」という情報が出回っている。
「複数の医療関係者がSNSで同様の情報を出している。一方で、それを否定する医療関係者も居り、真偽の程は分からない」(全国紙記者)
GLP‒1受容体作動薬は「トルリシティ」「ビクトーザ」「オゼンピック」「リベルサス」等いくつか有り、自分で注射をするものと内服薬の両方が有る。脳や胃腸に作用して食欲を抑制する事から、一部のクリニックやインターネットサイトでは、「ダイエット薬」と紹介されている事も有る。
ところが、最も多く処方されている「トルリシティ」が今年に入り「国内外の需要急増の為」供給不足となり、切り替え先となった他剤も連鎖的に供給不足になってしまった。「製造元のイーライリリーは、国内外の需要急増が供給不足の原因であり、製造時に不具合が発生した訳ではないと説明しているが、需要急増の理由がはっきりしない為、ダイエット目的での使用に流れているのではないかという憶測が後を絶たないのです」(前出の記者)
真偽は不明だが、ダイエット目的の使用より、治療中の患者の為にもメーカーにはしっかりした在庫管理をお願いしたい。
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