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第161回 浜六郎の臨床副作用ノート ◉ BCG骨炎・骨髄炎と接種再考

第161回 浜六郎の臨床副作用ノート ◉ BCG骨炎・骨髄炎と接種再考

結核は、日本では第2次大戦後、年間数十万人が罹患し、10万人近くが死亡する重大な感染症であった。その後、1992年には高まん延国の基準(40人/10万人年)を割り込み、2021年には、見かけ上10人/10万人年未満の低まん延国になった。見かけ上というのは、報告漏れや診断漏れを考慮したWHOの補正罹患率では11人/10万人年だからである。

欧米の結核低まん延国では、BCGは高リスク者に対する選択的接種が行われている。BCGには、骨炎・骨髄炎、播種性BCG感染症、BCG性髄膜炎など重篤な害反応があるため、日本でもBCGを全員接種から選択的接種に切り替えるべきとの議論がある。薬のチェックでは、108号においてBCGを取り上げ、とくに5歳未満の乳幼児における結核罹患率と、BCG骨炎・骨髄炎など重篤なBCGによる害とのバランスを検討した*。その概略を紹介する。

BCGの結核予防効果は確実

BCGは、結核罹患率が高い集団にいて未感染の場合に、結核の発病を予防し、死亡率を低下させることが大規模なランダム化比較試験で確認されている。「結核罹患率が高い」とは、その集団の人口10万人あたりの罹患率が40人以上を指している。

また、BCGを1回接種すると、発病予防効果は以前推定されていた期間より長く、現在では約60年間有効と推定されている。そして、再接種は不要であり、かつ無効である。

そのため、一生に1度接種するなら、発病後に重症化しやすい乳児期に接種するのが最も適切であり、現在日本でも、出生した乳児全員を対象に、5〜7カ月齢まで(8カ月齢になる前)を標準としてBCGの接種が行われている。

BCGによる骨炎・骨髄炎など重篤な害

05年から、生後6カ月未満児にベルクリン反応なしで1回だけBCGを接種する方法に変わったが、BCG接種による骨炎や骨髄炎の報告が増え、13年からは生後1歳に至るまで(標準5〜7カ月齢)に接種する方法に切り替わり現在に至っている。

今回BCGの利益と害のバランスを考えるため、あらためて国へのBCG接種後の重篤な害反応の報告を精査した。13〜22年9月までの9.5年間に890万人が接種を受け、全身播種性BCG感染症18人、BCG骨炎・骨髄炎81人、皮膚結核様病変63人、化膿性リンパ節炎123人、BCG髄膜炎1人、アナフィラキシー11人など合計約300人のBCG関連重篤害反応が報告されていた。重篤反応の年間報告頻度は10万人接種あたり3.2人であった。

高齢者も高まん延状態を脱しつつある

日本では10万人あたりの結核罹患率が、21年にはじめて9.2人まで低下した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックのため感染防止対策が強化されたことによる低下の要素が加わったとはいえ、全年齢で低下が確実に進んでいる。21年までは80歳以上の男性と90歳以上の女性が10万人あたり40人を超えていたが、22年には80〜84歳の男性と90歳以上の女性が40人を下回った。今後は高齢者の罹患率低下が確実で、低まん延化が進むと考えられる。

また、0〜4歳児の結核罹患率は10万人あたり0.53人、0歳児は10万人あたり1.1人であり、0歳どうしの比較でもBCGによる害の頻度(10万人あたり3.2人)が結核罹患率の3倍に達している。

結論

BCG接種による重篤な害の発生率を考慮すると、高リスク者に対する選択的接種方式に早急に移行すべき時期に来ていると考える。

参考文献

*薬のチェック2023:23 (108):76-80.
https://medcheckjp.org/issue/108/

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