厚生労働省や文部科学省、内閣府に跨がる子供関連施策を一元化する「こども家庭庁」が4月1日に発足した。初代長官には、厚労官僚で内閣官房こども家庭庁設立準備室長だった渡辺由美子氏が就任した。児童手当の拡充を始めとした「異次元の少子化対策」を掲げる岸田文雄政権だが、財源の確保など難題が山積しており、政策の成否は「豪腕」と評される渡辺氏に掛かっていると言っても過言ではない。
こども家庭庁は、内閣府の子ども・子育て本部や厚労省の子ども家庭局等の業務を移管し、首相官邸直属の子供政策の司令塔になれるよう、新たに内閣府の外局として設置された。400人超規模の体制で、官房機能の他、保育など子育て支援を担う「成育局」と、虐待等に対応する「支援局」を新たに設けた。
その事務方トップに立つのが渡辺氏だ。このコーナーでも度々取り上げて来たが、簡単に経歴をまとめる。千葉県出身の渡辺氏は、東京大学文学部卒業後の1988年に旧厚生省に入省した。保険局総務課長や大臣官房会計課長を務める等、医療や介護、年金といった社会保険制度に詳しく、財務省にも独自のパイプが有るのが特徴だ。説明能力が高く、根回しも丁寧な事から田村憲久・元厚労相や加藤勝信・厚労相ら族議員からの信頼も厚い。これまで省内からは「旧厚生省出身者で初めての女性事務次官になるのは渡辺氏だ」(ある幹部)という声が根強かった。
そんな渡辺氏がこども家庭庁の初代長官になったのは、その手腕の他、直近の経歴によるところが大きい。2019年夏から2年間、子ども家庭局長を務め、比較的馴染みの無かった子供政策に精通した。その後は官房長に昇格し、こども家庭庁の下準備の為、自民党に戻っていた加藤氏ら党幹部に足繁く通い、組織作りを下支えしていた。
昨年6月から準備室長を務めていたが、当時は初代長官への就任は既定路線と言えない状況だった。加藤氏らが長官の民間人登用を主張していたからだ。その為、村木厚子・元厚労事務次官らの起用案が浮上していたが、政権内で「異次元の↖少子化対策」が俄に重要度を帯びて来るようになり、「財源問題を含めてこの難局をまとめられるのは渡辺氏しかいない」(政府関係者)という声が日増しに大きくなって行った。最終的に加藤氏も民間人登用を諦め、渡辺氏に白羽の矢が立った形になった。
渡辺氏を支える成育局長には藤原朋子・厚労省子ども家庭局長、支援局長は吉住啓作・内閣府子ども・子育て本部統括官、長官官房長に小宮義之・設立準備室次長が就任する。渡辺氏と藤原氏は入省年次も近く、同性という事もあり気心の知れた仲だ。一方の吉住氏は旧総務庁、小宮氏が旧大蔵省出身だが、局長以下の職員は厚労省子ども家庭局からの出向組が多く、仕事を進める上で支障は無いと見られる。
政府が3月末に発表した少子化対策の叩き台を実現する為、6月の骨太方針、年末の予算編成まで財源確保を巡る難しい調整が待ち受けている。一方、来年の夏以降、渡辺氏が厚労省に事務次官として舞い戻るのかにも注目が密かに集まっている。
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