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第66回 厚労省人事ウォッチング 夏の幹部人事で薬系技官のトップ交代なるか?

第66回 厚労省人事ウォッチング 夏の幹部人事で薬系技官のトップ交代なるか?
山本 史氏 (厚労省HPより)

 厚生労働省の今夏の幹部人事で、薬系技官の最高ポストである山本史・大臣官房審議官(医薬担当)の交代が取り沙汰されている。2020年1月の就任から3年以上が経過し、新型コロナウイルス感染症が「5類」に移行する事も決まっているからだ。仮に交代になれば、その後任は吉田易範・医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長の就任が有力だが、意外な対抗馬も浮上して来ているという。

 山本氏は、1986年に東京大学薬学部を卒業し、88年に東京大大学院を修了。同年に旧厚生省に入省した。生活衛生局生活化学安全対策室を振り出しに、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構や環境庁地球環境部等を経て、医薬食品局監視指導・麻薬対策課監視指導室長兼麻薬対策企画官に就任。その後は、医薬品医療機器総合機構新薬審査第二部長や医薬食品局食品安全部基準審査課長、医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長を歴任し、20年1月から女性として初めて薬系技官のトップである現職に就任した。

 業界紙記者は「山本氏は派手さは無いものの、手堅い仕事ぶりで知られている。人柄も温厚であまり敵がいない印象だ」と明かす。

 20年1月に山本氏が審議官に就任するに当たり、ライバルとなったのが磯部総一郎・元監視指導・麻薬対策課長(85年入省)だった。磯部氏の仕事ぶりはとかく「豪腕」として知られ、森和彦・前大臣官房審議官(医薬担当)の後任を山本氏と争ったが、私大の東京理科大卒という学歴等も影響し、薬系技官のトップに昇り詰められなかった。↘

 実は、薬系技官の間では「東大閥」と「京大閥」という学閥が在り、いずれかでないとトップにはなれない「不文律」が有るとされる。吉田氏は東京大卒、東京大大学院修了の90年入省で、山本氏の後任としての条件を満たす。保険局医療課薬剤管理官や医薬品医療機器総合機構審査マネジメント部長、医薬・生活衛生局食品基準審査課長等も務めた。特に、緊急承認制度を盛り込んだ改正医薬品医療機器等法を成立させたのは1つの成果と言↖える。ただ、大臣官房審議官就任への「障壁」になり兼ねないのが、目下のコロナ禍における「不手際」だ。

 先の業界紙記者は「吉田氏の仕事振りについて省内でその手腕を疑うものはいないが、業界団体からの評判はあまり良くない。更に、ワクチンの承認の遅さ等、首相官邸からコロナ対応についてとかく評判が悪かった。こうした評判がどの程度、今後の人事に影響するか分からない」と指摘する。

 こうした状況下で、俄に対抗馬として注目されるのが、佐藤大作・医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長だ。92年入省と吉田氏よりも入省年次は2年下だが、同じ「東大閥」で安全対策課長など枢要なポジションを歩んで来ている。省内には「順当に行けば吉田氏だが、首相官邸等の介入が有れば、順番がひっくり返ってもおかしくない」(中堅職員)との声も有る。

 いずれにしても幹部人事が行われる夏までもう少し時間は有る。薬事行政関係者の間で、俄に薬系技官の人事が注目を集めているのは確かな様だ。

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