2022年12月17日、社会に多大な貢献をされた医療従事者を顕彰する「集中医療大賞2022」と、美術や音楽、癒しの活動を積極的に取り入れ、心地良い空間作りに取り組む医療施設を顕彰する「癒しと安らぎの環境賞2022」の表彰式、及び「Art in Hospital チャリティーコンサート」が東京都港区のサントリーホール「大ホール」で開催された。
表彰式では、主催者代表で集中出版最高経営責任者の尾尻佳津典が、「このフォーラムは今年で20周年を迎えました。これもひとえに後援して下さる多くの企業の皆様方、医療関係の皆様方のお陰と厚く御礼を申し上げます」と謝辞を述べ、「20年はあっと言う間でしたが、振り返ればその間に、創設メンバーの日野原先生、髙久先生、カメラマンの稲越先生が亡くなられました。その方達の遺志を継ぎ、この会を継続すべく益々活動に力を入れて参ります。『継続は力』と言いますが、支えて下さる方が居るからこそ継続が出来ます。この活動は、20年前と比べ今の方がより必要とされています。それは現在の日本が世界も驚く程の速さで高齢社会を駆け抜け、そして超高齢社会に入っているからです」と締め括った。
次に、来賓として衆議院議員の三ッ林裕巳氏が、「20周年を迎え、盛大に開催されます事を心からお喜び申し上げます」と祝辞を述べ、「今国会に於きまして、感染症法の改正、また障害者総合支援法の改正等を行いました。ただ法律が改正されても、新型コロナウイルスの蔓延によってアートと触れ合う機会が少なくなり、安らぎも癒しも無くなっている様です。この生活環境の中で、アートの必要性を再認識したのではないでしょうか。今日のこのコンサートが、皆様にとって、そして日本の医療の発展にとって、良い機会として捉えられればと思います」と挨拶した。
又、今年度新たに理事に就任した麻倉未稀氏(歌手)、生島ヒロシ氏(フリーアナウンサー、東北福祉大学客員教授)、幸田正孝氏(元厚生事務次官、一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構顧問)、徐志敏氏(株式会社ジェー・シー・ディ代表取締役)、Joseph Ibanez氏(University of Cambridge Japan Consulting Supervisor 共同代表)、辻口博啓氏(「モンサンクレール」オーナーパティシェ、株式会社スーパースイーツ代表取締役)、原田義昭氏(元環境大臣、弁護士)の7名が紹介され、実行委員会を代表し4名の理事が挨拶に立った。
最初に挨拶に立ったのは、「日本の医療の未来を考える会」の最高顧問を務める原田義昭氏。「新型コロナウイルス感染症が日本社会を覆い尽くしましたが、日本ばかりではなく世界中の人々にとっても大変な苦痛でした。ようやく先が見えて来たかと思っていますが、これからも気を緩められないと感じています。特に、医療関係者の皆さんが国民を指導して下さっている事に敬意を払い、心から感謝を申し上げます。又私たち理事も、日本の医療の未来をしっかり支えて頑張ります」と決意を述べた。
続いて、病院建築の第一人者で、ハピネスライフ財団理事長の長澤泰氏が、「20年前の設立時、著名な先生方と名を連ねさせて頂きましたが、人生100歳以上という事ですので、これからも頑張りたいと思います」との決意に続けて、「長い間、東京大学で病院建築の研究と設計指導等に携わっていましたが、工学院大学では『ジェロンテクノロジー』という、共生社会を目指した共生工学をセンター長として研究して来ました。病院は身体を治す所ですが、心も直さなければならないという考えから、私達は『健院』を主張して、その実現の為に『ハピネスライフ財団』を設立し努力しております」と言葉を述べた。
次に、医療界外から理事に就任した1人として、生島ヒロシ氏が挨拶に立った。ラジオパーソナリティを務める立場から、「私のラジオ放送では、心と身体と財布の健康をテーマとしており、三位一体にならないと、人間の幸せや国民の幸せは望めないと思っています」と言い、「ビル・ゲイツ氏の慈善事業への取り組みが、稲盛氏の言葉である『ど真剣』に通じると共に、世界の幸せを願っていると伝わり感動しました。日本の医療も、今こそ『皆の幸せは何なのか』『医療の在り方は何なのか』を根本的に問い、日本の底力を発揮して世界に通用する展開をして行く必要が有ると思っています」と、今後の日本の医療の在り方を提言した。
同じく医療界外の理事で、日本のスイーツ界を牽引する辻口博啓氏からは、「パティシエと医療がどの様に結び付くかという事を考え、やはり血糖値の上がり方、糖との関わり方をデータベース化して、正しくお菓子と向き合える様な社会を作って行きたいと思っています。その上で、糖尿病予備軍を少しでも減らし、健康な日本の社会作りに協力出来ればと思っています」と、パティシエの見地から健康との関わり方が提案され、全ての挨拶を締め括った。
集中医療大賞2022
開催:2022年12月17日(土)
会場:サントリーホール「大ホール」
門脇 孝
国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 院長
糖尿病学の権威として2型糖尿病の原因の究明に貢献。患者中心の医療を掲げて虎の門病院の院長として奮闘。医療を通じて多大な貢献をされた事を顕彰。
『集中』は医療と社会に関して、国民の良識を反映させる様々な意見を掲載しています。今回この様な賞を頂いた事は、大変嬉しく光栄です。私は糖尿病を専門とする内科医として、2型糖尿病の原因となる分子メカニズムの研究に携わって来ました。原因の解明を効果的な治療に繋げて患者を救いたいと思っていましたし、予防が実現して糖尿病の無い世界になればという思いもありました。東京大学医学部附属病院と虎の門病院で院長を務めて来ましたが、どちらの病院にも様々な領域を専門とする医師が居て、私と同じ様に患者の事を考え、日々最善の診療を行い、研究に取り組んでいます。院長の私は、彼等の思いが実現するように病院運営を行っています。医師・研究者の仕事も、院長の仕事も、取り組む気持ちは一緒なのです。糖尿病の医学は著しく進歩し、糖尿病でも元気で長生き出来るようになりましたが、社会には糖尿病患者に対する偏見や差別が残っています。糖尿病を持つ人が普通の人として扱われる社会が来る事を望んでいます。
竹田 晋浩
医療法人社団康幸会かわぐち心臓呼吸器病院 理事長・院長
COVID-19との戦いで命を救う最後の砦として大活躍したECMO。この操作困難な医療機器で多くの命を救う等、医療を通じて多大な貢献をされた事を顕彰。
「集中医療大賞」を頂けた事は、大変光栄に思っております。仕事で御一緒させて頂く事がある大阪大学の澤芳樹先生が以前受賞されていますが、今回の受賞を報告したところ、喜んで頂けました。『集中』は、現場の臨床医の問題から医療行政の問題迄、医療の幅広い分野に関わる様々な意見が掲載されているのが特徴かと思います。医師は自分の専門分野には精通しますが、視野が狭くなりがちなので、幅広い分野の多くの意見や知恵に接する事が出来るのは、素晴らしい事だと感じています。私はECMOを日本に広める仕事に取り組んで来ましたが、皮肉な事に、COVID-19はECMOを普及させるのに大いに貢献しました。ECMOは心肺蘇生でも使用しますが、この場合は使っても2〜3日。呼吸器疾患で使う場合は平均2週間、長ければ1カ月に及ぶ事も有ります。治療期間が長くなる程、扱う医療者の能力差が出てしまうので、ECMOを扱う医療者の養成は重要です。
南渕 明宏
昭和大学横浜市北部病院 循環器センター長・心臓血管外科 教授
人知れぬ努力と数多くの手術を行い、ゴッドハンドの異名を得た。心臓外科の世界を縦横無尽に行動して多くの命を救い、医療を通じて多大な貢献をされた事を顕彰。
順天堂大学の天野篤先生や大阪大学の澤芳樹先生等、医学界をリードして来た名だたる方々と同じ賞を頂ける事を嬉しく思っています。『集中』はしっかりと意見を発表出来る場だと考えています。このまま行けば皆一緒に崖から落ちてしまうという時でも、声を上げると誹謗中傷されるのが今の社会です。誰もが目立ちたくないので声を上げない。一緒に崖から落ちるなら、それで構わないと思っているのです。嘗て私は『集中』で連載をさせて貰いました。尾尻代表が、一民間病院の心臓外科医だった私を起用してくれた事を意気に感じて、執筆しました。これ迄にいくつかの雑誌に関わって来ましたが、実際のところ『集中』でしか書けない事が在るのです。DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは、集権的な統治を認めない自律した組織の事ですが、今必要なのはそれだと思います。日本では集権的・階層官僚的な統制を行おうとしていますが、それは医療の世界にはそぐわないと感じています。
渡邊 剛
医療法人社団東京医心会 ニューハート・ワタナベ国際病院 総長兼理事長
困難な手術で人の命を救う事を生き甲斐に、ドイツで研鑽を積み、高い技術を獲得。心臓外科医として最高の環境で最高の医療を提供する、医療への多大な貢献を顕彰。
ロボット手術に長年携わっており、それが評価されて「集中医療大賞」を頂けるのは大変光栄で有り難い事です。今迄の、日本初のダヴィンチによるロボット手術やオフポンプでのバイパス手術、心拍動下での僧帽弁手術、そして世界初の完全内視鏡下冠動脈バイパス手術等、日本初や世界初という手術が評価されたのではないかと思っています。加えて、病院を設立した事も、結果的には評価の対象になったのかも知れません。特に患者さんの負担軽減の為に身体の傷を小さくする事や、人工心肺を使わない事を第一に考えていた点も、今回の評価に繋がったのではないでしょうか。しかし、患者さんの負担が軽くなる分、それを完遂するには医師の負担が大きくなりますが、如何に早い回復と社会復帰を実現するかが大切と捉えています。その意味でも『集中』は、経済や社会とも繋がりの有る日本の医療の本質を深い部分にまで突っ込んで描き出しているので、大いに期待しています。
Ravindra Gupta
University of Cambridge Professor of Clinical Microbiology
エイズ患者を寛解させたニュースは『ロンドンペイシェント』の名と共に世界中を駆け巡った。COVID-19でも数多くの論文を発表、世界で最も論文が引用される等の功績を顕彰。
Thank you very much. I am truly delighted to receive the news of a very prestigious award in Japan. My primary research so far has been the London Patient. Also, COVID-19 has disrupted medical care around the world. During this period, I have continued my laboratory research in Cambridge on the virus. I have published many papers so that I can contribute to the world's medical investigation during this pandemic. I believe that my research has helped many researchers around the world, which led me to receive this award. I hope that Shuchu Publication, Ltd will create a forum for the publication of medical research papers in Japan. Finally, the lecture I gave in Japan at the invitation of Shuchu Publishing was a very meaningful and productive. I wish Shuchu Publishing Ltd, all the best in their future endeavours and international undertakings.
LEAVE A REPLY