SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

第62回 厚労省人事ウォッチング 年金局長人事で検討された幻の案とは

第62回 厚労省人事ウォッチング 年金局長人事で検討された幻の案とは

 2025年の通常国会に提出する次期年金制度改革に向けた議論が厚生労働省で始まった。既にマスコミでは国民年金の納付期間を65歳まで延長させる案が直ぐに実現するかのごとく報道され、世論に波紋が広がっている。

 政策の舵取り役を担う厚労省の「年金局長」を巡り、夏の幹部人事では一時有力視された「幻の案」が有った。その案とは——。

 現在の年金局長は6月の幹部人事で就任した橋本泰宏氏だ。東京大法学部を卒業した橋本氏は1987年に旧厚生省に入省し、雇用均等・児童家庭局保育課長や大臣官房会計課長、社会・援護局障害保健福祉部長等を歴任。大島一博事務次官や伊原和人保険局長ら人材豊富な87年組の一人で、局長ポストでは社会・援護局長と子ども家庭局長を務めた。橋本氏は「年金畑」という訳ではないが、年金局事業管理課長を経験しており、厚労省幹部は「派手さは無いものの、手堅い仕事振りで知られている」と話す。

 しかし、6月以前に省内で検討された人事案では、年金局長の「本命」は別の人物だったという。関係者は「当初、大臣官房総括審議官になった間隆一郎氏(90年、旧厚生省入省)が年金局長になる予定だった。しかし、或る所から『待った』が掛かった」と言うのだ。

 その張本人が当時の後藤茂之厚労相だ。間氏の危機管理対応や説明能力の高さを評価しており、自身の続投を見越して足元の大臣官房に留め置いたという。総括審議官として食品安全基準等の部門を他省庁に移管し、医薬承認の迅速化に向け厚労省内を組織再編するという仕事に、その「豪腕」を振るってもらいたいという思いもあったと見られる。

 厚労省幹部は「間氏は前回の改正時に年金課長を務め、制度に明るいばかりか、首相官邸や永田町への根回しも上手い。口が立つ間氏は複雑な年金制度を説明するのに、うってつけの人事だったのだが……」と明かす。

 結局、後藤氏は8月の内閣改造で留任せず、厚労省を去る羽目になった。ただ、橋本氏が25年の法案提出迄やり遂げるかというと不透明な状況だという。省内外の組織改編がある程度落ち着き、年金制度改革の議論が本格化すれば、「1年後は間年金局長かも知れない」(厚労省幹部)という声があるからだ。

 負担増に繋がり兼ねない年金制度改革の報道に対し、首相官邸は既に神経を尖らせているという。厚労省幹部は「医療や介護、年金に関して、負担増の記事ばかり出ているので、どういう事か説明をしろとお叱りを受けた」と話す。実際の制度作りや根回しに奔走する事になる局長は要の人事とも言える。

 或るメディア関係者は「年金に関する報道は新聞の他、テレビも大きく取り上げがちになる。特にワイドショー等は他紙の記事を参考に独自の取材に基づく事無くに取り上げる。厚労省から見れば世論を如何にコントロールするかが重要で、かつては年金局幹部が各社の論説委員回りをこまめにしていた。厚労省には真摯に説明する姿勢が求められるが、今の年金局にそうした雰囲気があるのかは今のところよく分からない」と指摘する。「幻の案」が来年には実現するのか否か——。

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

COMMENT ON FACEBOOK

Return Top