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未来の会

アルツハイマーの治療薬開発に待った?

アルツハイマーの治療薬開発に待った?
アルツハイマーの治療薬開発に待った?

 高齢化社会の課題の1つはアルツハイマー型認知症の克服だが、その治療薬開発の根拠として注目されて来た論文に今、捏造疑惑が持ち上がっている。問題となっているのは、2006年に米・ミネソタ大学のシルヴァン・レスネ氏らが、英国の学術誌『ネイチャー』に発表した論文だ。レスネ氏らのグループはマウスを使った実験で、認知症の記憶障害を引き起こす原因物質がアミロイドβの1種である「アミロイドβ*56」である事を突き止めた。

 アミロイドβは健康な人の脳にも存在しているが、認知症の患者の脳ではこのアミロイドβが排出出来ずに溜まり、結合してオリゴマーとなる。この脳内に出来たオリゴマーが認知症を引き起こすと言うのが、現在、認知症の原因として有力視されている「アミロイドβ仮説」だ。レスネ氏らは問題の論文で、認知症を引き起こすアミロイドβのオリゴマーを「アミロイドβ*56」と名付け、若いマウスにこの「アミロイドβ*56」を注入したところ、記憶障害が見られる様になったと報告している。論文はこれ迄に2200回以上も引用され、「アミロイドβ*56」は認知症治療薬の有力なターゲットとされて来た。

 ところが、この実験の画像に複数の疑義が生じているのだ。研究者から指摘を受けて調査を開始した『ネイチャー』は、画像に複数の改竄があった可能性が有ると発表。これ迄に複数の研究者がレスネ氏らの実験を再現しようとしたが成功した例は無く、「アミロイドβ*56」は、認知症の原因物質かどうか以前に、存在も危ぶまれる事態となっている。

アルツハイマー型は認知症の中でも最も多いとされる

 この疑惑を受け、アミロイドβ仮説に則った治療薬を開発中のエーザイは7月25日、「開発中の薬剤(レカネマブ)とアミロイドβ*56は一切関係が無い」とするプレスリリースを発表。第2相試験で有効性が見られたとして、開発を急ぐ考えを示した。

 ただ、アミロイドβをターゲットにした先行のアルツハイマー治療薬「アデュカヌマブ」は、米国では高齢者向け保険に適用されない等、思うように普及しておらず、期待通りの効果も示せていない。今回の疑惑を受け、「アミロイドβ仮説」そのものが振り出しに戻る恐れも有る。人類が認知症を克服するのは未だ先の事になりそうだ。

少子化加速で不妊治療はどうなる?

 日本産科婦人科学会(日産婦)は、2020年に体外受精で生まれた子供が、初めて前年を下回った事を明らかにした。

 不妊治療の対象となる女性の人口が減り続ける中、今年4月から体外受精が公的医療保険の対象となった事が〝追い風〟となるか注目される。

 日産婦の集計では、20年に体外受精で生まれた子供は、前年より201人少ない6万394人だった。現行の調査方式で集計が残る1986年以降、減少したのは初めて。治療件数は44万9900件で、これも前年より8201件減った。

 コロナ禍で治療を控える人が増えた事もあるが、第2次ベビーブーム(71〜74年生まれ)の女性が40代後半となり、治療が難しくなった事が大きい。予想以上に人口減少が進む中、不妊治療の適用となる女性は今後、大きく減少して行く。

 「公的医療保険の適用により経済的な負担が小さくなった事で、不妊治療を受けるハードルは低くなると期待されるが、若い人が減って行き、婚姻数も減って行く中、保険適用で上昇に転じたとしても一時的だろう」と都内の産科医は分析する。

 新生児の13人に1人が体外受精児となった不妊治療大国の日本だが、少子化により女性の絶対数が減る中、今後は不妊治療を行うクリニックの淘汰も進んで行くかも知れない。

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