2024年の介護保険制度改革の中心テーマが出揃った。▽要介護1、2の人へのサービスを市区町村の地域支援事業へ移行▽自己負担割合(現行は原則1割)を原則2割に——等で、既視感の有るものばかり。ただ、前回の21年度改革時には「地ならし」としてこれらを提案した格好の厚生労働省だが、今回は本気度が窺える。
火を付けたのは、5月に財務省の財政制度等審議会がまとめた提言だ。要介護1、2の人の市町村の地域支援事業への移行や自己負担割合のアップ、ケアマネジメントに自己負担導入——等で、目新しいものは無い。繰り返し提言し、負担増に対する心理的ハードルを少しずつ下げて行く効果を狙っている。
高齢化に伴う介護給付・事業費の膨張に対する財務省の懸念は極めて強い。制度発足時の00年は3・2兆円だったのに対し、18年度には10・1兆円に達した。団塊ジュニア世代が65歳以上となる40年には25兆円近くに上ると推計しており、この「2040年問題」を見据えた給付減に躍起となっている。
一方、厚労省も介護をターゲットにせざるを得ない事は重々承知している。幹部の1人は「月の平均保険料が6000円を超えて限界が近付き、削減効果が大きい事をやらねばならない。実現出来るかは未知数だが、要介護1、2の人の移行は再度提言せざるを得ない」と話す。
サービスの地域支援事業への移行に関しては、既に要支援1、2の人の通所サービスを15年度から2年間掛けて移し終えている。国の介護保険制度の下、一律だったサービスの基準や単価は市町村毎に設定出来るようになった。建前は「住民主体の多様なサービス」ながら、真の目的はボランティアも動員するコストカットである事は明白で、それまで受けていたサービスを受けられなくなった人も続出した。
要介護1、2の人の移行も最初からくすぶっていた構想だ。ただし要介護1、2の人は全認定者669万人(19年度時点)の内37%を占める。要支援1、2の人の割合(28%)と合わせると65%が通常の介護保険から閉め出される事になる。
日本デイサービス協会は昨年10月、地域支援事業の実態を調査し、会員の113事業所から回答を得た。その結果、事業を受託しているのは56・6%と半数強に留まり、受託していない事業所の57・1%は「報酬が低い」と答えた。単価は以前のサービス費の70〜80%に設定され、最低は61%だったという。同協会は4月、森剛士理事長名で現状のままでの要介護1、2の人の移行について強く反対する文書を公表し、検証やサービスが断絶されずスムーズに移行出来る制度に改めるよう求めた。
要介護1、2の人は認知症の人が少なくない。仮にそっくり地域支援事業に移行した場合、介護のプロではないボランティアが認知症の人のケアをする場面も出て来るだろう。東京都内の専門医は「認知症の人のケアは専門性が求められる。内容は勿論、サービスが減る事になれば進行予防にも影響する」と指摘している。
要支援1、2の人の地域支援事業への移行も様々な課題が置き去りになったままとなっている。それでも厚労省はなり振り構わず給付費削減に向け、突き進もうとしている。
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