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N党ガーシー氏無断欠席に問われる国会のモラル

N党ガーシー氏無断欠席に問われる国会のモラル
参院議運委が渡航届を却下、欠席届を出さぬまま開会へ

去る8月3日、参議院選挙後、初の国会が開かれた。初当選を果たしたのは42名。各々が希望と決意を胸に国会議事堂の中央階段を上り、普段は開かずの扉である中央玄関から国会に足を踏み入れた。真新しい議員バッジを着け、出欠を表示する登院板のボタンを押す。独特の高揚感が湧く瞬間だ。午後から直ぐに本会議が始まる。重厚なドレープのカーテンの先は議場だ。議長、副議長の選出を終えると天皇陛下をお迎えし開会式が行われる。国家国民の為に献身的に尽くそうという決意が込み上がる瞬間でもある。

そんな初登院を欠席した議員が14名いる。立憲民主党の水野素子議員は家族が新型コロナウイルス感染症に感染した為、登院はしたものの本会議場には入らず、他の12名も体調不良での欠席である。体調とは関係無く欠席したのは、NHK党公認で初当選の東谷義和(通称ガーシー)議員の1人だけだ。今、このガーシー議員の政治姿勢が巷で物議を醸している。ガーシー議員は現在ドバイに滞在中だが、前日、参議院の議院運営委員会で氏が提出した海外渡航届は全会一致で却下され、議会の許可を得ず臨時国会を欠席したと見做された。却下の理由は、渡航届には帰国日が記載されていない等の説明不足だという。議院運営委員会は、早期の帰国と国会への出席を求めている。

ガーシー氏がドバイから帰国しない理由

ガーシー議員は選挙前からドバイに滞在し、選挙運動はSNSやユーチューブ等を利用して積極的な発信を行う空中戦に終始していた。そして、当選したとしても日本へは帰国せずドバイに滞在を続け、議員活動はSNS等での発信で行う事を明言していた。事前に有権者に対して告知しているからといって許されるのか? それを許す道理は今のところは無い。では、帰国しない理由は何か? そして、SNSで行うという活動の内容はどういうものなのか。ガーシー議員自身の話では、過去にバーやアパレルショップを経営していた商売上の関係で多くの芸能人と接点を持つようになり、芸能人をアテンドするようになったと言う。だが、この「アテンド」が意味深長だ。議員をよく知る関係者は「アテンドとは、芸能人の行動や身の回りの世話、彼女の紹介」だと言う。ガーシー議員は芸能人を長年に渡りアテンドする中で多くの人脈を築いて来た。反面、自分自身「依存症に陥っている」と言う程のギャンブル好きであり、そのせいで多額の借金も抱えていた。その返済に行き詰まり、犯罪にも手を染める。韓国の世界的人気グループ・BTSに会わせると嘯き、対価を事前に徴収したのだ。その後、「新型コロナウイルス感染症蔓延の影響でキャンセルになった」と告げた上で返金を行わないという詐欺行為を20件以上も行い、被害総額は約4000万円にも上った。後日本人も「BTSに会わせる」と言って集めた金は違法賭博で使い消滅させた事を認めている。ガーシー議員をよく知ると言う関係者は「詐欺に遭った被害者が警察に相談に行き、ガーシー議員の携帯電話にも末尾が0110の警察の番号から着信が入る様になった。身に覚えのある以上、捜査が及ばないUAEに急いで逃げた」。そして現在に至っている。

こうして暴露系ユーチューバーが誕生した

ガーシー議員がUAEに逃亡した後、一部の被害者が人気ユーチューバーであるヒカル氏に相談し、ヒカル氏が自身のユーチューブチャンネルでガーシー議員の行為を被害者と共に発信した。詐欺行為の実態は瞬く間に広まった。それに激高したガーシー議員も自らユーチューブチャンネルを立ち上げてヒカル氏に怒りをぶつける。とは言ってもヒカル氏は何も悪い事はしておらず、やり場の無い怒りで自暴自棄になったガーシー議員は、ヒカル氏が自分に行った行為を自分もするのだとして、接点のあった芸能人等の秘密を暴露すると宣言した。つまり、八つ当たりである。

ガーシー議員の行った数々の芸能人の暴露配信はものの見事に拡散され、あっと言う間に登録者数が100万人を超える人気チャンネルとなる。そして、登録者数や動画の再生回数が飛躍的に伸びる中で、ガーシー議員に支払われる広告料も莫大になって行く事が予想された。ガーシー氏は、ここで入ると見込まれた広告料を見せ金に東京美容外科の麻生泰医師から4000万円を借り入れ、BTS詐欺の全ての被害者に弁済を行った上、示談を成立させている。だがその示談書を提出するも、警察は受け取らない。その事から、ガーシー議員は帰国したら逮捕されるのではと考えられる様になった。

NHK党立花氏はガーシー氏を有効利用出来たのか

ガーシー議員をNHK党で公認し当選させた立花孝志党首は、この一連を「不当逮捕の可能性がある」と表現している。しかし、詐欺は行為に及んだ事自体が犯罪で、親告罪ではない。要件を満たした時点で犯罪は成立している。

立花氏は、国会議員の不逮捕特権があるからガーシー議員は帰国しても逮捕される事は無いとして立候補の決断を後押ししている。それも、少し違う。不逮捕特権が有効なのは国会会期中のみである。又、内閣を通じ議院運営委員会に付託され決議された場合においては逮捕する事は可能である。勿論、現行犯逮捕に関しては国会議員の不逮捕特権など無い。ガーシー議員の場合は既に海外に逃亡中であるから、警察が身柄の拘束をする可能性は非常に高いだろう。逮捕された場合は保釈も厳しい。

NHK党は先の参院選でガーシー議員に出演料として暗号資産で1000万円を支払っている。更に、ガーシー議員がとある芸能人から借りた6000万円を返済する為の資金も貸し付けている。NHK党の立花氏は、なり振り構わず話題性の高かったガーシー議員による票を取りに行った。立花氏は自身のユーチューブチャンネルで、当選の暁にはガーシー議員に3億円を払うと迄言い、実際その内の9000万円を支払った。既に合計は1億6000万円に達している。これではガーシー議員は誕生したものの、政党交付金の増加分を加味してもNHK党の実入りは微々たるものか、赤字の可能性すらある。

NHK党は1議席増やせたものの、国内でのガーシー議員の政治活動に見通しが立たず、国民からの風当たりも強くなるに違いない。ガーシー議員の当選で一体誰が得をするのだろうか。国会に出席すらしない議員を当選させたのは、他ならぬ一部の国民の投票によってだが、その結果、血税を無駄に垂れ流された被害者は全国民である。

後悔先に立たずと言うが、ガーシー議員の一発除名は容易ではない。国会議員の除名には議員の3分の2以上の賛成が必要で、これ迄70年以上行われていない。懲罰には戒告、陳謝させる、登院停止、除名と4段階有り、除名に至るには長期間を要する。辞職勧告決議もあるが強制力は無い。

NHK党の立花党首は、もし除名への動きがある場合はある特定の1議員を選定し、徹底的に叩く等ブラフとも思える発言もしている。もうこうなると党首の発言ではなく、「反社」の発想に近い。ガーシー議員の言う「悪事を暴露して行く」が果たして国政に寄与するのか。リモート議会を認める法律など無く、独自解釈による国会議員の勝手な行動は許されない。国会は立法における最高機関で、遵法意識は高くあるべきだ。国会議員が担う役割や使命を今一度糺す必要があろう。

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