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社会福祉法人大磯恒道会「破産」の真相④

社会福祉法人大磯恒道会「破産」の真相④
1億2000万円の支払いを巡る裁判に勝訴

長い歴史を誇った社会福祉法人大磯恒道会(神奈川県大磯町。以後は大磯恒道会)が2018年12月6日に破産した。用意周到に計画された「大磯恒道会の擬装破産」から利益を得た面々を炙り出す。

 破産から半年後の19年6月24日付で大磯恒道会の上野保・破産管財人から弊社へ訴状が届いた。弊社に破産した大磯恒道会へ1億2000万円を支払えと言うものだ。前号でも述べたように、「大磯恒道会債権者会議」の席上で、この破産の不正を追及する弊社に対する嫌がらせであり、「口封じ」のための訴訟だと感じた。

 一般的に破産管財人の起こす訴訟は破産管財人に有利に働く事も前号で述べた。弊社は不利な状況の中で、1億2000万円が掛かった重要な裁判が始まった。万が一、敗訴となれば盗人に追い銭だ。敗訴するわけにはいかない。しかし、訴訟の争点は至ってシンプルだ。破産した大磯恒道会に弊社に関係する2つの契約書が残されていた。

 1つは、集中出版が経営に参加する事を表明した契約書「経営権の委譲に関する覚書」(以下「経営権委譲の覚書」だ。この覚書は弊社が経営参加するために1億5000万円を支払うという内容だ。

 もう1通は、「債務承認弁済契約書」(以下「債務契約書」」だ。これは、「経営権委譲の覚書」を解除するので、仮払いした3000万円は返却してくださいという内容だ。弊社は経営権の委譲にあたり、当然ながら大磯恒道会の財務・経理・法務等の調査であるDD(デューデリジェンス)を行った。その結果、契約続行が出来ない事由が見つかったため、その日に中井弘隆・元理事長(仮名)に伝え、本人も了承した。しかし、中井元理事長の強い要請を受け、弊社代表の尾尻佳津典は形式上の理事長に就任した。これは口約束だったが、口約束も立派な契約行為となる。争点は2つの契約書の扱いになった。

「集中出版から金を巻き上げよう」

 上野破産管財人は訴状の中で、「経営権委譲の覚書」だけを証拠として提出して来た。そして、この覚書は正当なものであり、集中出版は残りの1億2000万円を支払え、遅延損害金も支払えとある。上野破産管財人は、自分にとって都合の良い「経営権委譲の覚書」については正当な効力があるが、弊社に取って有利なもう1通の「債務契約書」には目を向ける事はなかった。都合の良い契約書だけを証拠に取り上げて、不都合な書面は無視するという戦法だったようだ。これには裁判官も戸惑ったに違いない。

 事実を争うのではなく、「集中出版を1人悪者に仕立て、金をまき上げよう」という合い言葉で、訴訟をばく進していた。この言葉は上野破産管財人が中井元理事長や他の面々に発していた言葉だ。弁護士であり、破産管財人の言葉とは思えない。弊社は、この裁判で上野破産管財人から提出された準備書面と、2人からの陳述書や書面の中身を顧問弁護士と精査し、それに対する反論を準備した。

 上野破産管財人は「中井元理事長は『経営権委譲の覚書』が合意解約された事は認めていない」「デューデリジェンスの結果により、支援を止める可能性が有ったとは認められない」「尾尻の理事長就任は形式的であるという話は監督官庁に対して虚偽の意思表示をした事になるし、虚偽の登記申請をした事になるので、有り得ない」等と一方的に自説・持論を述べるだけで、証拠となる内容ではなかった。

 また、上野破産管財人の依頼を受け裁判所へ書面を提出させられた大磯恒道会の取引先の代表は「上野保破産管財人から集中出版や大磯恒道会についての質問があり、それに回答したが、事実確認等もなく、本意ではない書面が法廷に提出された」と怒る。

 その後、この代表は書面の取り下げを要請したが、上野破産管財人から「係属する訴訟で書証として裁判所及び被告へ提出済みであり、当該書証の取り調べが完了しましたので、その後は証拠申し出の撤回はできないものと思料します。(略)当職は、上記訴訟において書証として用いる以外に使用する意思はありませんのでお知らせ致します」の書面が届いた。書面は既に法廷の中で使用し終え、今となっては用無しの書類だから取り下げる意味もないという趣旨を返信している。見事なまでに裁判を舐めきっている。

 英国ケンブリッジ大学法学部教授に今回の経緯を説明すると、「米国や英国の法廷だと『法廷侮辱罪』が指摘される可能性は高い」とコメントしている。

 長い裁判の中、弊社は、上野保破産管財人の主張をひとつひとつ潰していった。

 この裁判は21年2月1日に判決が出た。集中出版の勝訴だった。

 主文 (1)原告上野保破産管財人の請求は却下する。(2)訴訟費用は原告上野保破産管財人の負担とする。そして「事実と理由」の長文が続くが、その一部を以下に要約する。

 原告上野保破産管財人の主張と被告集中出版の主張を精査すると、上野保破産管財人から提出された中井元理事長の陳述書他には矛盾があったり、信憑性に乏しく、逆に、集中出版が契約を解約したという主張は理路整然としているし、何よりも「債務契約書」が存在している。この存在を無視しろと言う事は出来ない。また、尾尻が作成した備忘録の記載の内容は事実に沿っている。原告上野保破産管財人の主張を採用する事は出来ない。(略)以上により、被告集中出版は、本件合意に基づく残金1億2000万円の支払義務は負わない事に帰する。結語。よって原告上野保破産管財人の請求には理由がない。

破産管財人の懲戒請求書を提出

 上野破産管財人の完敗だった。この判決は当然と言えば当然の判決だが、弊社は相当の労力を要した。弊社は、大磯恒道会の破産申請で尾尻の名前を勝手に使われた事を許す事は出来ない。よって断固たる措置を取る事を決め、その1つとして弊社は上野破産管財人に対して懲戒請求書を提出した。理由として、①虚偽の書証を裁判所に提出した事②大磯恒道会の事業承継について特定人を優位に扱った事③債権者の債権の軽視する事を記した。法律を舐めた弁護士が破産管財人となる事を許してはいけないとの考えからだ。上野破産管財人は現在、エアアジア・ジャパン株式会社の破産管財人に就いている。弊社はここの債権者の面々とも情報交換をしており、債権者会議の状況も取材中だ。

 もう1つは刑事告訴だ。大磯恒道会の破産は山下純一理事長(仮名)による乗っ取り行為であり、明らかな犯罪行為とみた。また、この悪事話に相乗りした上野破産管財人は犯罪幇助と言えるのではないか。2人は監督官庁の神奈川県保健福祉局に虚偽の報告をし、「入居するお年寄りを助けるために……」の言葉で、破産しか大磯恒道会を救う道はないとした。「もし……」はないかもしれないが、この時、神奈川県が監督官庁として、もう少し大磯恒道会の実情を正しく把握していれば、もう少し大磯恒道会の入居者やその家族の事を真剣に考えてくれていれば、こんな破産劇は生まれなかった。まるで詐欺行為のような破産は防げたと考える。これは間違いない。神奈川県も「これで大磯恒道会が持つ過去の闇を葬れる」と考えたのではないかと頭の片隅をよぎった……これは禁句だろうか。大磯恒道会を自己の利益目的で破産させ、自分の社会福祉法人を受け皿とした詐欺的な行為を警視庁に刑事告発する準備を進めている。

 大磯恒道会は地元大磯町の中﨑久雄町長をはじめ、平塚市役所、二宮町役場等からも熱心に支えられ、それに応えるようにスタッフも素晴らしい働きだった。それだけに、このような犯罪行為は本当に残念だ。               (敬称略)

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