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第45回 秋と目される幹部人事。樽見次官の後任は?

第45回 秋と目される幹部人事。樽見次官の後任は?
吉田学
事務次官候補に名前の挙がる吉田学・内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室長

 厚生労働省の幹部人事は秋にずれ込みそうな状況となっている。病床確保等通常の新型コロナウイルスへの対応に加え、7月末までに希望する高齢者にワクチン接種を終えようと急ピッチで作業を進めており、業務が多忙を極めているからだ。昨年9月に行った幹部人事同様、秋に実施されるのが有力だ。

 焦点は、樽見英樹・事務次官(1983年、旧厚生省入省)の後任人事だ。樽見氏は昨年9月の幹部人事で事務次官級の内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室長から事務次官に就いた。就任して1年足らずだが、同期の鈴木俊彦・前事務次官(83年、旧厚生省入省)が2年居座ったため、「83年組」が計4年も事務次官を務めれば人事が滞留しかねず、1年限りでの退任が確実視されている。ある中堅職員は「樽見氏から細かい指示は少なく、問題がなければ担当に任せる部分が大きくなっている。続投する意向はないのではないか」とみる。

 後任は、吉田学・内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室長(84年、旧厚生省入省)の昇格が有力だ。京都大法学部出身の吉田氏は、広報室長や保険局保険課長、野田佳彦首相時代の首相秘書官、内閣官房社会保障改革担当室審議官、医療介護連携担当の大臣官房審議官等を経て、子ども家庭局長、医政局長を務める等、社会保障全般に詳しく、コロナ対応もこの1年で熟知したため、経歴は申し分ない。仕事ぶりも「細やかで業界団体や政治家への根回しも丁寧」(幹部)として知られる。

 ただ、424の公立・公的病院の再編統合を打ち上げた当時の医政局長で、「技官と事務官の混成部隊だった医政局をうまくまとめられなかった」(別の幹部)との評判も付きまとう。コロナ室長時代には、月に378時間も残業した職員が注目を浴びる等、マネジメント能力にも疑問符が付きかねない状況だ。

 当人は「コロナの自粛下で酒を飲まないから」と周囲に語っているが、「パワハラ」で知られる西村康稔・経済再生相の「お守り」で心労がたたってか激ヤセしたという。

 とはいえ、コロナ対応が続く中で労働官僚に事務次官を回す余裕はない。労働官僚も「こんな状況で事務次官ポストを主張する事は出来ない」とあきらめ顔だ。厚生官僚で84年組の有力幹部は吉田氏のみで、85年組の濵谷浩樹・保険局長は健保法改正案の取りまとめや国会対応が中心でコロナ対応に関わっておらず、昨今の状況で事務次官に昇格するのはまだ早そうだ。

 こうした事情もあり、樽見氏の留任を望む声もある。課長クラスのある職員は「樽見さんが事務次官になってからも忙しいのは変わらないが、以前より組織はうまく回り始めている。吉田さんが就任するより、今のままの方が組織は安定すると思う」と話す。樽見氏は杉田和博・官房副長官との関係も良好で、樽見氏の意向はともかく、官邸の考え次第では残留の芽も出てきそうだ。

 秋と目される幹部人事では、吉田氏を中心に議論が動きそうだ。しかし、コロナ対応で政権の存続も危ぶまれる状況で、五輪後ともいわれる解散総選挙の時期やその結果も影響を与えかねない。今後の情勢次第で、吉田氏からひっくり返る状況も出てくるかもしれない。

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