新型コロナウイルスに対するワクチン接種が、我が国でも進められている。現在承認されているのは、米ファイザー社のメッセンジャーRNA (mRNA)ワクチンだけだが、今後、英アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチン等、いくつかのワクチンが承認されると予想されている。こうした新しいタイプのワクチンについては、各国で接種が進む事により、市販後調査のデータも集積されつつある。3月24日に衆議院第一議員会館で開かれた勉強会では、国産ワクチンの開発にも関わっている国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センターの長谷川秀樹センター長を講師に迎え、新しいタイプの新型コロナワクチンについて、更には国産ワクチンの開発状況等についても解説して頂いた。
原田義昭・「日本の医療の未来を考える会」国会議員団代表(自民党衆議院議員)この会はケンブリッジ大学と連携していく事になっています。待望のワクチン接種も始まりました。コロナ禍の中で、医療従事者の皆様の頑張りに心から感謝します。これからもそれに恥じない活動をしていかなければ、と考えています」
三ッ林裕巳・「日本の医療の未来を考える会」国会議員団(内閣府副大臣、自民党衆議院議員、医師)「従来のワクチン政策では、国の予算が乏しかったのは明らかです。国産ワクチンを作るためには、創薬に対する支援をしっかり行っていく事が大切です。今後のパンデミックのためにも、そうした体制を整えなければと思っています」
新型コロナワクチンについて
■新型コロナウイルス感染症について
コロナウイルスは元々風邪を起こす4種類のウイルスが知られていました。その他にSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)もコロナウイルスが原因です。この2種類のウイルスは肺炎を起こします。新型コロナウイルスは、風邪のウイルスであると同時に、一部の人に対しては肺炎を起こします。両面を持ち合わせているウイルスなのです。
新型コロナウイルスが発症しても、80%の人は風邪のような症状が出るだけで軽症ですが、20%の人は肺炎に進みます。その中から一部の人が重症になり、更にその中の一部の人が死亡します。新型コロナウイルスが感染した時、体の中で起こる免疫応答で様々な炎症性サイトカインが作られます。それによって、全身性の炎症反応または血管内皮障害等が起こり、全身の多くの臓器に合併症が生じる事になるのです。
■ワクチン開発について
2020年2月の段階で、日本でもワクチン開発を考えなければならなくなり、我々は厚生労働省とどういう戦略でいくかを話し合いました。国内の設備を使って作れる可能性があるのは、抗原となるたんぱく質を大量に生産し、それをワクチンとして使う「組み替えワクチン」だという事になり、その開発を進めてきました。
海外ではDNAワクチンやmRNAワクチン、あるいはウイルスベクターワクチン等、新しいワクチンが登場しています。病原体のたんぱくを使ったワクチンと異なり、病原体の遺伝子をワクチンとして用いる方法です。遺伝子を接種して体の中で病原体のたんぱくを作り出し、それに対する免疫を誘導するのです。これに対し、組み替えたんぱくワクチンは、遺伝子情報を元にして病原体のたんぱく質を作って、それをワクチンとして使います。新型インフルエンザのパンデミック後、新型インフルエンザのワクチンを作るプラットホームとして整備されたものが国内にありました。
ウイルスベクターワクチン、mRNAワクチン、DNAワクチン等は、遺伝子情報だけから作られるので、比較的開発しやすいのが特長です。ただ、今までの実績に乏しい面があります。それに対し、不活化ワクチン、生ワクチン、組み替えたんぱくワクチンにはインフルエンザ、麻疹、風疹、B型肝炎、HPV等で既に多くの経験があります。
国内での新型コロナワクチンの開発状況を見ると、大阪大学とアンジェスが取り組むDNAワクチンは臨床治験第1/2相が終了した段階です。塩野義製薬が主導し感染研も関わる組み替えたんぱくワクチンは、臨床治験第1/2相が昨年12月から始まり、この3月で終了します。第一三共と東大医科研のmRNAワクチンと、KMバイオロジクスの全粒子不活化ワクチンは、今年になって臨床治験が開始されました。IDファーマのウイルスベクターワクチンは、臨床治験開始が予定されています。
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