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第43回 コロナ禍の送別会で「更迭」された真鍋課長

第43回 コロナ禍の送別会で「更迭」された真鍋課長
更迭された真鍋馨・老人保健課長

 政府が新型コロナウイルスの感染拡大で国民に外出や会食の自粛を要請している中、厚生労働省の職員23人が深夜まで送別会を開いている事が分かり、会合を企画した真鍋馨・老健局老人保健課長(1995年、旧厚生省)が更迭された。減給10分の1(1カ月)の懲戒処分を受けた真鍋氏は医系技官の「エース」として知られ、省内からは「こんな時期に何をやっているんだ」と、怒りとも失望とも取れる声が漏れる。

 真鍋氏は、東北大医学部を卒業後に入省。老健局老人保健課介護報酬専門官や医政局経済課長補佐、保険局医療課長補佐、長野県健康福祉部長等を経て、2018年7月から老人保健課長に就任していた。老人保健課長は鈴木康裕・前医務技監も経験した「出世コース」。

 真鍋氏の仕事面での評判は高く、ある厚労省幹部は「プリンスと呼ばれ、将来を期待された人材の1人だった」と明かす。

 問題が起きたのは、東京都等首都圏の緊急事態宣言が解除された3日後の3月24日。銀座の居酒屋で自治体から派遣されている職員の送別会と、3年に1度の介護報酬改定の作業が終了した事等を名目に、課員23人で飲み会を開催した。都内には午後9時までの時短営業が要請されていたが、わざわざ午後11時まで開いている居酒屋を予約。「どんちゃん騒ぎ」は午前0時近くまで続いたが、たまたま居合わせた週刊誌記者に目撃され、3月29日に厚労省に取材が入り、こうした実態が公になったという。

 一報を受けて省内は騒然となった。ある幹部は「なんでこんな時期に大人数で飲み会を開いているのか」と呆れ、ウェブ記事を読んだ職員は「本当にこんな事を今時やっているんですか。大変な騒ぎになりますよね」とつぶやいた。

 3月30日に田村憲久厚労相は記者会見で頭を下げ、幹部は謝罪行脚を重ねた。省内では「真鍋という名前も聞きたくない」(幹部)という「怒り」も聞こえ、法案審議に影響しかねないため、怒り心頭に発した与党幹部からは「懲戒免職が妥当だ」という声もあったほどだ。

 真鍋氏は「軽率で浅はかだった。省全体に迷惑をかけて申し訳ない」と話しているという。真鍋氏は宴会好きとして知られ、「酒好きの課長から誘われたら断れない雰囲気があった」と証言する職員もいる。緊急事態宣言明けだった事も影響してか、厚労省によると「飲み会を止める意見は出なかった」という。老人保健課には優秀な職員が集められていたが、「仕事は出来るが、飲み会好きな職員も多かった」と、真鍋氏に似た人物が集まっていた可能性がある。

 真鍋氏の後任は、平子哲夫氏(98年、旧厚生省)に決まった。平子氏は広島大医学部を卒業し、母子保健課長等を務め、直近は社会保険診療報酬支払基金審議役だった。ある幹部は「本省の課長は引き剥がせなかったので、外から登用した」と明かす。

 真鍋氏は懲戒処分を受けた事で当面昇進や昇給は止まり、大臣官房付として省内のコロナ対策本部で雑用をこなす「雑巾がけ」の日々を送るとみられる。たった1度の飲み会で「出世コース」から外れ、官僚としての信頼を失ってしまうという痛い「ツケ」を支払う事になった。

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