霞が関官僚には「キャリア」と「ノンキャリア」の2つの職種がある事は広く知られている。厚生労働省にも一般職のノンキャリとして採用された職員は多いが、本省課長職に就くノンキャリも少なからずいる事はあまり知られていない。ノンキャリの人事異動が多い4月に合わせ、厚労省内のノンキャリの「実態」を紹介したい。
本省での一般職採用は「厚生」「労働」「電気・電子・情報」の3つに分かれるが、その大半を占めるのが「厚生」と「労働」だ。
入省後は部署が分類された人事グループに配属され、約8年で係長に昇任し、係長・課長補佐として長い長い勤務が続く。人事グループは「厚生」では「福祉」「医療保険」「医薬健康」「年金」「会計」「統計情報」、労働だと「職業安定」「労働基準」「雇用環境・均等」が存在する。
例えば、人事グループのうち、「福祉」では社会・援護局、子ども家庭局、老健局、「医療保険」では保険局と医政局で異動を繰り返す。入省後は約1カ月の研修後、希望に応じて割り振られる。
毎年、「厚生」は50人前後、「労働」は30人前後が採用されるが、2016年度から採用が始まった「電気・電子・情報」ではIT系の技術者らが5人前後採用されるにすぎない。
ごくまれに課長に昇進するノンキャリもいるが、そのポストは限られている。医政局では医療経営支援課長、社会・援護局は事業課長、子ども家庭局の子育て支援課長、労働基準局では労災保険業務課長、職業安定局の地域雇用対策課長等だ。
老健局や年金局、保険局には課長ポストはないが、室長等のポストは用意されている。ポストの業務の特殊性を加味して決まり、政策の状況に応じてそのポストが変わる、というのも特徴の1つだが、キャリアに比べるとその数は圧倒的に少ない。中堅のノンキャリ職員は「ポストが増えてくれると仕事がやりやすくなるかもしれないが、キャリアと対等にやり合える人はそもそもあまりいない」と言葉少なだ。
人事グループには「書記」と呼ばれ、人事等を掌握するポストがある。ここがノンキャリの人事異動に大きな実権を持つ。ある厚生系のノンキャリは「各人事グループで実権を持っている執行部に気に入られないと出世が出来ない」と話し、能力よりも「コネ」が重要視される傾向が強いという。
とはいえ、ノンキャリに能力がないかと言えばそうではない。ある若手のキャリア官僚は「仕事しない総合職のキャリアもいる。キャリアだからといって一様に出世するのが良いとは思わない。頼れるプロパーのノンキャリもいる」と話す。
ただ、かつて九州厚生局長を務めたノンキャリが社会福祉法人幹部から現金や高級車を受け取っていた問題も発覚する等、問題がなかったわけではない。その後、九州厚生局長はキャリアの指定席になっている。
厚労省ではこうした「壁」を取り払おうという動きはある。これまで若手キャリアの登竜門的ポストだった、各局の法令係や企画係の係長にノンキャリを一部で登用し始めた。厚労省改革を目指す中堅・若手職員が提言をまとめた経緯もあり、少しずつではあるが改革の機運は高まりつつあるかもしれない。
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